タイトル |
分子シャペロンCDC48によるタンパク質分解経路の制御機構 |
担当機関 |
(独)水産総合研究センター 中央水産研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
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発行年度 |
2012 |
要約 |
CDC48の機能阻害(ノックダウン)はユビキチン・プロテアソーム経路およびオートファジー・リソソーム経路による細胞内の主要なタンパク質分解を停止させ、脳神経系・筋肉に異常を起こし、致死的に作用したことから、CDC48は基質タンパク質を選別してタンパク質分解を促進する必須の分子であることを明らかにした。
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背景・ねらい |
水産物の品質は、生体におけるタンパク質の分解経路および活性が影響すると考えられるが、その制御機構は十分に理解されていない。これまでの研究から、細胞分裂周期遺伝子CDC48がこれらの分解経路を制御する働きを持つことが分かったので報告する。これまでにタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)のタイプや基質について多くの研究が行われ、カテプシン、カルパイン、コラゲナーゼ等が肉質軟化に関与することが分かってきた。これらのプロテアーゼは、生体ではタンパク質の分解・除去、栄養代謝、ストレス応答等、生命を維持する上で重要な役割を持つが、プロテアーゼの種類、分布および活性と生理状態や肉質との関係は十分に理解されていない。タンパク質分解経路は、ユビキチン・プロテアソーム経路とオートファジー・リソソーム経路の2つに分かれ、前者はプロテアソームによってATP存在下でユビキチンが付加された特定のタンパク質だけを選択的に分解し、後者はリソソームに含まれる酵素群によって細胞内で不要になったタンパク質や小器官を分解する経路である。これらの分解経路は生体内では生理状態に応じて厳密に制御されると考えられてきたが、今回、基質選択性や分解系の活性化機構を制御する分子としてCDC48を同定した。
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成果の内容・特徴 |
ゼブラフィッシュ胚でのCDC48の翻訳阻害によって、発生遅延、頭部萎縮、体節湾曲が見られ、脳神経系においては、激しい細胞死、神経変性、ユビキチン化タンパク質の蓄積が生じ、筋肉においては、筋繊維の構造の脆弱化、細繊維化およびサルコメアの不鮮明化が生じ、CDC48を介するタンパク質分解作用が胚発生に重要であることが分かった(Imamura et al, JBC, 287, 23047-23056, 2012)。CDC48の翻訳阻害によって、ユビキチン・プロテアソーム経路およびオートファジー・リソソーム経路が正常に働かないことが、蛍光基質タンパク質の分解活性、およびオートファジーで形成される膜小胞(オートファゴソーム)の形成異常および基質分解能の低下によって確認された。これらの分解経路は、低温ストレス条件下ではユビキチン・プロテアソーム経路を促進するが、酸化ストレス条件下ではユビキチン・プロテアソーム経路の働きが不十分となり、オートファジーへタンパク質分解の比重が移ることから、生理状態によってこの分子が分解経路の選択に関与することが推定された。
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成果の活用面・留意点 |
タンパク質分解を伴う異常肉や栄養障害・ストレス、有害化学物質等による生理障害の原因究明や防止に役立つと考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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研究内容 |
http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4228&YEAR=2012
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カテゴリ |
生理障害
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