トマトの養液土耕栽培におけるリン酸無施肥がリン酸収支に及ぼす影響

タイトル トマトの養液土耕栽培におけるリン酸無施肥がリン酸収支に及ぼす影響
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2009~2011
研究担当者 渡邊修一
笠原賢明
吉川弘恭
発行年度 2011
要約 トルオーグリン酸60.5mg/100g乾土の灰色低地土を用いた養液土耕栽培では、リン酸無施肥の影響は茎葉のリン酸含量低下だけで、収量に影響はなく、土壌からのリン酸供給量で十分生育する。一方、慣行施肥での余剰リン酸はリン酸蓄積を助長する。
キーワード トルオーグリン酸、リン酸無施肥、養液土耕、灰色低地土、トマト
背景・ねらい 点滴かん水による適切な水管理を行えば、収量を落とさずに、大幅な施肥削減が可能であることが、低コストな点滴かん水装置を用いた養液土耕を露地栽培に導入した事例から示されている。このことから養液土耕の導入によるリン酸減肥栽培は、リン酸肥料の農地への過剰蓄積や肥料価格の高騰などの問題解決策として期待できる。そこで、養液土耕によるリン酸減肥栽培の参考とするために、トルオーグリン酸60.5mg/100g乾土の灰色低地土を用いたトマト栽培において、慣行施肥とリン酸無施肥でのリン酸収支から、施肥リン酸と土壌蓄積リン酸(有効態リン酸)が植物体(茎葉・果実)で吸収利用される割合を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 摘心時の草丈と葉数および茎葉乾物重、果実収量については、いずれの項目においても慣行施肥区とリン酸無施肥区との間に有意な差は認められない(表1)。
  2. リン酸含量は、果実において両施肥区間に有意な差は無いが、茎葉ではリン酸無施肥区で低い(表1)。地上部の茎葉・果実の全量回収によるリン酸収支を計算すると、植物体が吸収し、各部位に分配されたリン酸量は、リン酸無施肥区の茎葉で有意に低下し、果実では差はない(図1)。
  3. 慣行施肥区では、一株あたりのリン酸施用量(3.55g)に対して量的に見れば、植物体吸収量は55%(1.95g)であり、45%(1.60g)が余剰リン酸である。また,栽培前後では一株あたりの培地に含まれる有効態リン酸が0.98g増加しており、余剰リン酸が土壌へのリン酸蓄積を助長している(図1)。
  4. リン酸無施肥区では、植物体に吸収されたリン酸量は、一株あたりの培地に含まれる有効態リン酸の減少分とほぼ一致する。栽培前後で減少する有効態リン酸量は、1.69gであり、栽培前土壌の有効態リン酸量の9%に相当する(図1)。
成果の活用面・留意点
  1. パイプハウス内の隔離ベッドでの低段栽培による4段果房までのリン酸収支である。
  2. 単年度の試験結果であるため、長段取りや連作する場合には、土壌のトルオーグリン酸画分の減少に伴い、作物体吸収リン酸量が変化する可能性がある。
  3. 培地土壌(灰色低地土)のトルオーグリン酸値60.5mg/100g乾土は、近畿中国四国地域で野菜畑や普通畑の有効態リン酸に関する土壌診断基準や改良目標を設けている13府県のうち6府県の基準値や目標値の範囲を超える値であり、減肥基準を設けている7府県のうち3県では減肥の対象となる値である。
    参考資料;2010年度農業生産環境対策事業のうち減肥基準策定に向けたデータ収集事業報告書(CD付)
図表1 235809-1.png
図表2 235809-2.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/warc/2011/151b0_10_04.html
カテゴリ 肥料 環境対策 施肥 低コスト 土壌診断 トマト 水管理

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