バイオマス資源作物エリアンサスの組織培養法の開発

タイトル バイオマス資源作物エリアンサスの組織培養法の開発
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2010~2011
研究担当者 上床修弘
齋藤 彰
我有 満
発行年度 2011
要約 エリアンサス(Erianthus arundinaceus (Retz.) Jeswiet)の完熟種子および葉鞘からMS培地に2,4-DとBAを添加した培地で再分化能のあるカルスを誘導できる。カルスは植物ホルモンを除いた培地に移植することで、遺伝的に均一な植物体を再分化できる。
キーワード エリアンサス属植物、カルス誘導、植物体再分化
背景・ねらい エリアンサス(E. arundinaceus)はわが国の暖地に適するセルロース系バイオマス原料生産のための最も有望な草種である。エリアンサスの栽培においては、管理、収穫を容易にする遺伝的に均一な種苗を大量供給することが有効であるため、組織培養によるクローン増殖技術の開発が求められている。また、遺伝資源の中に存在せず、交雑育種による導入が難しい有用形質がある場合、人為突然変異個体の作出や人工的に有用遺伝子を導入するための基盤技術として組織培養法は重要である。そこで、エリアンサスの種子と葉鞘を用いたカルス誘導、カルス維持のための継代培養の至適条件および再分化条件を検討し、遺伝的に均一な個体を作出する植物体再分化技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 外植片は滅菌した完熟種子あるいは茎頂点を除いた幼葉鞘を用いる。カルス誘導はMurashige & Skoog培地に30gL-1のショ糖、3gL-1ジェランガムを加えた基本固形培地に、適量の2,4-Dと6-benzyladenine(BA)を添加した培地で行う。カルス誘導では25℃、14時間昼光(100μMm-2s-1)で静置培養する。
  2. 「KO1」、「KO2」、「KO2立」、「JW4」および「JW630」の代表的なエリアンサスの系統で種子および葉鞘の外植片から再分化能を持つコンパクトカルスおよび透明カルスと再分化能を持たない柔滑カルスを誘導できる(図1)。
  3. 種子由来カルス誘導の至適条件は4mgL-12,4-Dと0mgL-1あるいは0.2mgL-1BAの組み合わせで約40-45%のカルス形成頻度を示す(90日間観察)。葉鞘では4mgL-12,4-Dと0mgL-1BAの組み合わせで約75%の形成頻度を示す(60日間観察)(図2)。
  4. 基本培地+2,4-D4mgL-1で誘導した「JW4」系統の種子由来のカルスを3週間毎に継代して4ヵ月間培養し、得られたコンパクトカルスおよび透明カルスを異なる濃度の2,4-Dを含む基本培地に継代する。このとき再分化能を持つカルスは、継代4週目の基本培地+2,4-D2mgL-1では73.2%が、基本培地+2,4-D4mgL-1では80.8%が維持される。他の培地条件では再分化能を持たない柔滑なカルスになる割合が多い(表1)。
  5. カルス誘導培地に外植片を3週間置床しカルスを形成させ、カルス増殖のために3週間の継代期間で1~2回培養した後、カルスを基本培地に移植し3週間培養することでシュートを再分化できる。得られたシュートを基本培地に継代し、シュートの発根を誘導する。発根したシュートをポットに移植し、温室の直射日光の当たらない場所で1ヵ月間生育させることで再分化した植物体を順化できる(図1)。
  6. 「JW4」系統の種子に由来する再分化個体(n=31)の17種類のプライマー(Operon社製)を用いたRAPD解析では、得られたDNAバンド3068中3067バンドはプライマーOPD-20のように多型を示さず、RAPDにおける遺伝的変異はほとんどない(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本技術は、遺伝的に均一な種苗の大量生産と遺伝資源系統のクローン化に利用する。
  2. 本技術は、エリアンサスの外来遺伝子導入技術確立のための基盤技術となる。
図表1 235835-1.png
図表2 235835-2.png
図表3 235835-3.png
図表4 235835-4.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2011/220a0_10_02.html
カテゴリ 育種 遺伝資源

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