タイトル |
窒素付加たい肥の製造と利用技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
田中章浩
荒川祐介
|
発行年度 |
2011 |
要約 |
窒素付加たい肥は、たい肥化で発生するアンモニアを完熟たい肥に吸着させて製造する速効性窒素成分を多く含む有機質肥料で、野菜栽培では化学肥料主体の慣行施肥と同等の収量、品質が得られる。
|
キーワード |
たい肥化、脱臭、アンモニア、牛ふんたい肥、窒素、有機質肥料
|
背景・ねらい |
畜産廃棄物については処理過程での悪臭発生低減およびたい肥の流通促進が喫緊の課題である。たい肥化過程で発生するアンモニアを別の脱臭槽に貯留した完熟たい肥に吸着させる低コストな「たい肥脱臭システム」を開発し、簡易な管理方法を検討する。さらにアンモニアを吸着して全窒素含量の高まったたい肥(窒素付加たい肥)の有機質肥料としての利用法を検討する。
|
成果の内容・特徴 |
- たい肥脱臭システムは周年を通じてアンモニアの97%、硫黄化合物の80%以上を脱臭する。また、窒素付加たい肥は、たい肥化過程の初期に発生するアンモニア等の強い悪臭成分をたい肥に吸着させて製造することができる(図1)。
- 悪臭を吸着するのに用いたたい肥のpHと電気伝導度(EC)を測定することで、簡易に窒素付加たい肥の全窒素濃度を予測することができる(図2)。脱臭槽のたい肥の全窒素濃度は通常たい肥の約2倍まで高まる。
- コマツナのポット栽培試験における窒素付加たい肥の窒素利用率は0.63で、同じ条件で化学肥料(硝安)の窒素利用率は0.90である。両者の比をとり、窒素付加たい肥の窒素肥効率は0.70と計算される(図3)。また、窒素成分の約半分が硝酸態窒素で速効的である。
- 窒素付加たい肥を全面全層施用した露地野菜栽培では化学肥料主体の慣行施肥と同等の収量、品質が得られる(図4)。
- 本堆肥の窒素成分の約半分は硝酸態窒素(水溶性)であるので、温暖期のみならず寒冷期の追肥にも適する。なお、露地栽培では降雨による溶脱を防ぐため、化学肥料に準じて播種・定植の直前に施用する。
|
成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:ローダー切返し方式の堆肥センター等において既設の通気システムを改修することで窒素付加たい肥製造が可能となり、窒素付加たい肥は有機栽培並びに特別栽培農産物の生産農家に有用である。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:堆肥化システムは全国で年間3件程度を見込んでいる。
- その他:当該システムは既に農事組合法人合志バイオXに設置されており、堆肥生産量年間3,700tのうち、344tを窒素付加たい肥として出荷している(2010年実績値、設計では堆肥生産量の約15%)。同施設での通気システムの設置経費は982万円程度(発酵槽の密閉、断熱配管、ファン、吸着槽等の脱臭設備)、悪臭を吸引するブロアの電力料金や維持管理費の実績は126万円/年程度(2010年)であるが、規模や設置方法によって異なる。導入にあたっては、諸費用、窒素付加たい肥の販売方法、品質管理方法等を十分に考慮する。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
図表4 |
|
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2011/a00a0_01_90.html
|
カテゴリ |
有機栽培
土づくり
肥料
こまつな
栽培技術
出荷調整
施肥
低コスト
播種
野菜栽培
|