畑地域に残る境木の多様性と地域性

タイトル 畑地域に残る境木の多様性と地域性
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間
研究担当者 徳岡良則
細木大輔(静岡県在住)
発行年度 2012
要約 全国各地で畑地境界の目印として植栽される境木(さかいぎ)には、現在も境界維持の役割や祭事での花木利用があり、加えて地域生物相の保全効果も期待されます。茨城県全域でこの境木を調べたところ、ウツギが最多でその他にカマツカ、マサキ、チャノキなど50種の木本が見つかり、使用樹種に地域的な違いがあることが分かりました。
背景・ねらい ヨーロッパでは畑地境界に利用される生垣が、鳥類、哺乳類、蝶類など多様な生物群の保全に寄与することが知られ、その保全が図られてきました。日本では水田やその周りを含めた景観が維持する多様な生物に関する研究が進められてきた一方、畑地景観の研究は遅れています。ここでは、畑地境界にある植生の実態把握と、他の生物群を保全する機能の解明に役立てるための基礎情報を得ることを目的として、茨城県内の畑地域に残る境木の種類やそれぞれの種類の分布傾向について調査・分析しました。
成果の内容・特徴 茨城県の台地上の畑地域に等間隔に177の調査区(図1)を割り当て、各調査区の畑地を調査した結果、2001個体、50種の境木が観察されました。総観察個体数に占める割合で見ると、最も多く用いられていた種はウツギ(60.7%)でした(図2)。それに次いで、カマツカ(8.8%)、マサキ(7.7%)、チャノキ(6.8%)、クワ(4.6%)、エノキ(4.2%)が多く用いられていました。
境木の分布傾向を見ると、ウツギは全調査区の90%以上で観察され、広く分布していますが、とくに、那珂川と恋瀬川に挟まれる地域に多く見られました。さらに、マサキは那珂川より北の地域に、チャノキは小貝川より西の地域に多く見られるように、各樹種は河川で分断される特定の台地に多く分布する傾向が見られました(図1(a)、図3)。このような境木の地域分布は、藤田稔(2002)「茨城の民俗文化(茨城新聞社)」に示された、茨城県内の祭事や方言の地域性との共通性が示唆されました。
本研究から、境木に用いられる樹種の分布は、茨城県内でも地域的な違いがあることが分かりました。今後、全国各地に見られる境木の分布や利用実態の把握、またこれら境木が地域生物相の保全に果たす役割の検証が必要です。
図表1 235867-1.png
図表2 235867-2.png
図表3 235867-3.png
研究内容 http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result29/result29_32.html
カテゴリ 水田

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