タイトル |
ハイパースペクトルリモートセンシングによる作物特性評価法とその水稲生育診断・収穫管理への応用 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
井上吉雄
境谷栄二
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発行年度 |
2012 |
要約 |
ハイパースペクトルリモートセンシングによって植物の生理生態・生育情報を広域かつ迅速に評価するための汎用的解析法を確立し、水稲の施肥診断に重要な群落窒素含有量および収穫管理に重要な玄米タンパク含有率を広域評価する新手法を開発しました。
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背景・ねらい |
植物の量・成分・機能に関する広域的情報は、農業管理の最適化(精密農業)や自然植生の劣化、炭素・窒素循環等を定量的に把握する上で重要な基礎となります。 そこで、超波長解像度(ハイパースペクトル)リモートセンシングを用いて、従来の方法では困難であった成分情報の推定に最適な分光指数を決定する方法を策定するともに、それに基づいて、水稲群落の診断管理に重要な窒素含有量および玄米タンパク含有率の最適評価アルゴリズムを開発することを目指して研究を行いました。
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成果の内容・特徴 |
- ハイパースペクトルセンサによって得られる数百におよぶ多波長データの全体を用いる多変量回帰法、ならびに有効な少数の波長を選定して用いる分光指数法を総合的に比較解析し、目的変量の推定に多波長データを効果的に利用する手順を提案しました(図1)。
- 2つの波長(i, jnm)における反射率(Ri, Rj)や反射率の1次微分値(Di, Dj)の差を正規化する分光指数NDSIおよび両者の比をとる指数NRSIについて、選択可能なすべての波長の組み合わせで指数の推定力(分光指数の目的変数に対する回帰のr2値)を計算し、その分布図から、形質ごとに最適な波長と波長幅を選定します。この方法は簡易なだけでなく、測定ノイズの影響を軽減する効果があり、多数の波長を用いる多変量解析法(PLS法やiPLS法)に匹敵あるいはそれらに優る推定力があることを明らかにしました。
- 生育診断や収量予察に重要な幼穂形成期の群落窒素含有量の推定では、iPLS法にも優る最高精度をもつ新指数としてNRSI(D740, D52)を開発しました。その再現性と有効性は、航空機センサによって得られた地域スケールのデータで検証されました(図2)。
- コメの品質向上のために重要な玄米タンパク含有率の推定では、新たな高精度評価指標としてNDSI(R970, R570)を開発し(図3)、従来の植生指数NDVIよりも優れた指標として、圃場ごとのデータに基づいた産地規模の計画的な収穫管理に活用されます。
現在、世界各国でハイパースペクトルセンサを搭載した衛星の打ち上げが計画されており、本研究で得られた手法と知見は、今後、精密農業や収量予察、品質向上のための作物情報計測や、植生の劣化、炭素・窒素循環解明への応用等、多面的な活用が期待されます。
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成果の活用面・留意点 |
本研究の一部は文部科学省宇宙利用促進調整委託費「食糧-環境インテリジェンスのための生態系リモートセンシング」による成果です。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result29/result29_52.html
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カテゴリ |
水稲
施肥
なす
評価法
リモートセンシング
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