再造林の低コスト化をいかに進めるか

タイトル 再造林の低コスト化をいかに進めるか
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 岡 勝
山田 健
落合 幸仁
佐々木 達也
齋藤 英樹
高橋 正義
鹿又 秀聡
上村 佳奈
今富 裕樹
中村 松三
重永 英年
野宮 治人
山川 博美
藤澤 義武
平岡 裕一郎
吉田 茂二郎
伊藤 哲
平田 令子
藤井 栄
金磯 牧夫
渡辺 直史
発行年度 2013
要約 伐採から植栽までを連続して行う一貫作業システムの導入、コンテナ苗の活用、下刈りの省略等により、植林と初期保育にかかるコストを、従来の2/3程度までに抑えられます。
背景・ねらい 戦後植栽されたスギやヒノキの人工林の多くが林齢40~50年になり、伐採時期を迎えています。しかし、低迷する木材価格に対して植林と保育に必要な経費が高いため、伐採したまま再造林を放棄する事例も見られ問題になっています。伐採とその後の再造林を後押しするため、再造林に必要な経費を削減する低コスト化に取り組みました。その結果、伐採から植栽までを連続して行う「一貫作業システム」を採用し、コンテナ苗の活用、下刈りの省略によって、植林と初期保育にかかる経費を従来の2/3程度まで削減できることがわかりました。
成果の内容・特徴

一貫作業システムで地拵え・植栽コストを削減

これまでの作業システムで、伐採・搬出と地拵え・植栽を別々の時期に行っていたのに対し、「一貫作業システム」とは、伐採・搬出に使用する車両系機械を活用して、伐採に続けて地拵えや苗木の運搬を行い、植栽までの作業を連続して短期間に行う方法です。このシステムでは、時期を選ばず植栽が可能なコンテナ苗を活用します。コンテナ苗は植栽が容易なため、同じ時間で裸苗の約2倍の本数の植え付けが可能でした。一貫作業システムにより、従来の作業方法に比べて労働投入量が2~3割ですむという結果が得られました。

下刈りを隔年で実施して経費を圧縮

植栽後5~6年の間毎年実施する下刈りは、植栽木が雑草木との競争に負けないように林地を刈り払う大変な作業で、育林コストの半分近くを占めています。スギ植栽木と雑草木との競争の実態を調べ、下刈り回数を減らした時のスギの成長を予測し、下刈り経費を計算しました。その結果、一年おきに下刈りを実施した場合には、従来の毎年下刈りよりいくらか成長は低下しますが、下刈りの総経費が3割程度削減され、低コスト化の選択肢の一つとして提案しました。

下刈りを省略してシカ被害を軽減

増えすぎたシカによる植栽木の食害も大きな問題となっています。被害を防ぐためにはシカ柵を張りますが、その設置と維持には多くの費用がかかります。下刈りを省略して雑草木が繁茂すると、柵なしでもスギ苗木の食害が軽減されることを実験的に明らかにしました。雑草木に覆われても比較的良く育つスギ品種の選抜を進め、「日向署2号」などが有望であるという結果を得ました。

スギ大苗を効率的に生産

苗高が120cmを超えるような大苗を植栽すれば、シカによる梢端部の食害の回避や、下刈り回数を減らす効果が期待できます。スギポット大苗の効率的な生産システムの開発に取り組み、播種から2年半で最大樹高120cmのスギ苗を作ることができました。

再造林コストを予測して最適な育林方法を選択

これらの成果をもとに、地拵えの方法、苗の種類や下刈り回数等を選ぶ多様な育林方法に対して、地拵えから下刈り期間終了までに必要な経費を計算する育林コストシミュレータを開発しました。これによると、一貫作業システムと隔年下刈りを取り入れた低コスト例1の場合には、従来の方法に比べて36%のコストダウンになります(表1)。また、施業プランナー等が、様々な育林方法の中から最適な方法を決定する際の支援ツールとして、地位や林道までの距離などの既存の地理情報からGISを使って再造林適地を判定するシステムと、モバイル端末により現場で簡単にコスト計算が可能なシステムも開発しました。

本研究は、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「スギ再造林の低コスト化を目的とした育林コスト予測手法及び適地診断システムの開発」による成果です。成果は「低コスト再造林の実用化に向けた研究成果集」にまとめられています。 (http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/3rd-chukiseika7.pdf)
図表1 235880-1.png
図表2 235880-2.png
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p6-7.pdf
カテゴリ 病害虫 コスト 雑草 シカ 低コスト 播種 品種

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