タイトル | 森林モニタリングの土壌侵食調査手法を海外普及に向けて発信 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
三浦 覚 永目 伊知郎 |
発行年度 | 2013 |
要約 | 日本全国の様々な森林に対して、林床被覆率(落葉か下草がどれだけ地面を覆っているか)が土壌侵食の有効な診断指標となることを示し、持続可能な森林経営に役立つ調査手法として、海外普及に向けて発信しました。 |
背景・ねらい | 土壌侵食を防いで土壌を守ることは、森林の生産力と公益的機能を維持して、持続的に森林を経営していくために欠かせません。本研究では、代表的な森林タイプでの詳細な土壌侵食の観測から、落葉か下草が地面を覆っているか、いないか(林床被覆率が100%か、0%か)で、土壌侵食量が50倍も違うことを明らかにしました。さらに、林野庁の森林生態系多様性基礎調査による日本全国の数千点の観測データを解析して、北海道から沖縄までの様々な森林でも、林床被覆率は土壌侵食の発生を予測する有効な診断指標として使えることが明らかになりました。国際的な林業協力(モントリオールプロセス)の中でも、森林をモニタリングする有用な指標として活用されることが期待されています。 |
成果の内容・特徴 | 持続可能な森林経営のための森林のモニタリング森林は、地球環境を守るために重要な役割を果たしています。国際的にも、森林を守り、持続可能な形で利用していくことの大切さは、1992年の国連地球環境サミットをきっかけとして各国の間で共有されてきました。そのためには、まず森林の生育状態を客観的な基準や指標を用いてモニタリングする必要があり、世界各国で精力的にそのための研究や事業が取り組まれています。わが国でも、1999年から林野庁による森林資源モニタリング調査事業(現在の森林生態系多様性基礎調査事業)が開始され、全国約1万5千カ所で森林資源量のほか、植生、生物被害、土壌侵食などの定点観測が続けられています。土壌侵食に対する林床被覆率の指標性を全国規模で確かめる森林の土壌を守り、養分や土砂が流出しないように管理するためには、土壌侵食の危険性を簡便にモニタリングする指標が必要です。森林での土壌侵食には落葉や下草の有無が関係すると言われてきました。そこで本研究では、まず、スギ林、ヒノキ林、アカマツ林、落葉広葉樹林の4つの森林タイプで林床被覆率(落葉か下草がどれだけ地面を覆っているかの割合、図1)と土壌侵食の関係を詳細に観測しました。その結果、落葉か下草が地面を覆っているか、いないか(つまり、林床被覆率が100%か、0%か)で、土壌侵食量が50倍も違うことを明らかにしました(図2)。さらに、この関係が多様な森林に広く当てはまるかを検討するために全国数千ヶ所の森林の土壌侵食のモニタリングデータを解析したところ、林床被覆率の大小は、土柱、リル、ガリーなど(図3)の土壌侵食の発生を示す痕跡の出現率に強く関係していることが明らかになりました(図4)。林床被覆率という指標の有効性森林の土壌を守り、養分や土砂が流出しないように管理するためには、林床被覆率を指標としてモニタリングしながら、落葉や下草による被覆を高く保つことが有効であることが分かりました。下草や落葉による被覆は、間伐して林床を明るくする、広葉樹を混交させるなど、森林の適切な管理を通じてコントロールすることが可能です。林床被覆率を目で見て判定するという簡便な指標は、土壌侵食の危険性をあらかじめ診断し、適切な森林管理につなげる有効な手法であるといえます。海外への成果の普及林野庁では本研究の成果をもとに、わが国の森林モニタリングで行っている、林床被覆率を指標とする土壌侵食の調査手法を海外に普及するための活動を開始しました。日本を含む温帯林と亜寒帯林諸国での、モントリオール・プロセスという持続可能な森林経営をめざす国際林業協力の場で、この手法の有用性がみとめられ、普及のための方法書として公表されることが決まりました。本研究は、「予算区分:一般研究費、課題名:健全な物質循環維持のための診断指標の開発」によって行われました。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p8-9.pdf |
カテゴリ | 経営管理 モニタリング |