林内走行機械による根の損傷を減らすために

タイトル 林内走行機械による根の損傷を減らすために
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 倉本 惠生
山口 岳広
佐々木 尚三
発行年度 2013
要約 トドマツ林内で林業機械を走行させた場合、トドマツの根の傷は走行回数が増えるとともに増え、回数とともに傷が拡大すること、木から1メートル未満で走行すると傷がつきやすくなることが分かりました。
背景・ねらい 緩やかな地形の多い北海道では、大型機械を林内走行させ、安全で効率良く木を切り出すことができます。ただし、残す木や土壌を傷めない配慮が欠かせません。しかし、機械の走行と根の損傷との関係は十分に分かっていませんでした。そこで林内で機械を往復させる実験を行ない、往復回数が増えると地表近くの根の傷の数が増えること、一度ついた傷は拡大することを明らかにしました。また、木のそばを機械が通ると傷がつきやすく、機械を木からおよそ1メートル未満まで近づけると特に傷がつきやすくなることが分かりました。これを手がかりに、根の損傷を最小限度に抑える機械作業の方法を提案していきます。
成果の内容・特徴

機械を林内に入れて木を収穫する

自走する機械を林内に入れて木の収穫を行う方法は、人が木を切ってワイヤーなどで運び出す方法に比べ、同じ時間ではるかに多くの木を安全に収穫することができます。機械が入りやすい緩やかな地形の多い北海道などではこの作業方法がもっと広まれば、収穫の経費が下がり利益も上がるでしょう。しかし、重くて大きな機械が林の中に直接乗り入れると、残す木に傷がつくことが心配されます。そこで、対策を立てるために、林内での機械の走行と傷との関係を詳しく調べました。

根を傷めない配慮が必要な理由

北海道の主な造林樹種であるトドマツは、傷から侵入した菌による材の腐れが起こりやすいとされています。大型機械が林内に乗り入れると地面に強い力がかかるため、水平方向に伸びる地表近くの大きな根が傷つくおそれがあります。根の傷から幹に腐れが進むと材の価値が低下するばかりか、収穫する前に木が倒れてしまう危険も増します。

機械の乗り入れ回数を減らす

根を傷めない作業の手がかりを得るため、私達はほぼ平らなトドマツ林の中でクローラ型(いわゆる「キャタピラ」式)機械(重量約12トン)を同じ速度で何度も往復させて根の傷つき方を調べました(図1)。まず明らかになったのが、機械が通る回数が増えると根の傷も多くなることでした(図2)。傷の数が増えない場合でも、一度ついた傷の多くは機械の往復とともに拡大し、根が切れたりもします(図3)。根が完全に切れてしまうと、皮がはがれるだけの傷と比べて、菌がより侵入しやすいと考えられています。調査では3往復目から根が切れ始めました。

木との間隔を十分にとる

もうひとつ重要なのが機械と木の間隔です(図1)。木と機械の間隔を1メートル以上にすると、0.5メートルと狭い場合に比べて傷の数と大きさは減少します(図4)。さらに間隔を3メートル以上に広げると、5往復しても傷は発生しませんでした。間隔を広くとることで傷が減る効果は、機械の往復回数が少ないほど大きい(図3)ので、間隔を1メートル以上にとり、回数を2往復以下に減らすことが重要です。
このように機械の走行と根の損傷の関係が数値で明らかになったことから、今後これを手がかりに根の損傷を最小限度に抑える機械作業の方法を提案していきます。

本研究は森林総合研究所交付金プロジェクト「緩中傾斜地に適した低コスト生産システムの開発」の成果です。
図表1 235883-1.jpg
図表2 235883-2.png
図表3 235883-3.jpg
図表4 235883-4.png
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p12-13.pdf
カテゴリ 傾斜地 低コスト

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