タイトル | 萠芽の特性を活かして里山二次林を管理する |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
正木 隆 伊東 宏樹 佐藤 保 大住 克博 |
発行年度 | 2013 |
要約 | ナラ類やサクラ類などは切り株からの萠芽の本数が多く、その能力は地際直径10~20cmで盛んで、40~50cmでほぼ失われます。一方カエデ、シデなどは萠芽本数が少なく、地際直径20~30cmで萠芽しなくなります。萠芽更新を行うには30~40年生での伐採がベストです。 |
背景・ねらい | 里山二次林は伐採と萠芽更新を繰り返して管理するのが合理的です。そこで伐採後の萠芽特性をさまざまな樹木で調査しました。この結果、コナラやクリ、カスミザクラ等のナラ属、サクラ属は萌芽本数が多く更新が容易ですが、カエデ属、シデ属、ミズキ、コシアブラなどの樹種は萠芽本数が少なく萠芽更新には不利でした。また、萠芽の本数は伐採から30~40年を経過して地際直径が10~20cmのときに最多となり、50~60年が過ぎて地際直径が30~50cmになると萠芽能力を失うことがわかりました。萠芽更新で二次林を維持するには、萌芽更新が容易な樹種が多く生育し、かつ林齢が50年未満であることが条件と言えます。 |
成果の内容・特徴 | 里山二次林の危機かつて里山の二次林は私たちの身近にあり、生活を支える存在でした。また、生物多様性条約COP10で設定された愛知目標の推進にも深く関係しています。今、その里山の二次林の手入れ不足が問題となっています。二次林は伐採と萠芽の繰り返しによって低コストかつ持続的に維持することが可能なシステムでしたが、伐採が行われなくなったために木が大きくなり、伐っても萠芽しない可能性が出てきたのです。しかし、萠芽の生態に関する基本的な知見が不十分なため、伐採した後の萠芽更新の成否を事前に予測することが困難でした。切り株の調査本研究では、二次林にみられる多様な樹種を調査し、萠芽しやすさ、萠芽させるための最適サイズや齢、萠芽の限界サイズや齢、萠芽の成長特性を調べ、伐採の効果を事前に判断できるようになることを目的としました。まず、伐採の翌年の二次林で、切り株からの萠芽を調べました。ナラやクリの仲間(コナラ、ミズナラ、クリ)、サクラの仲間(ウワミズザクラ、カスミザクラ)、カエデの仲間(イタヤカエデ、ウリハダカエデ、オオモミジ)、シデの仲間(イヌシデ、サワシバ)、その他(コシアブラ、ハクウンボク、ホオノキ、ミズキ、リョウブ)の合計15種類の伐根を合計450株調査し、発生していた萠芽を数え、伐根の直径を測定しました。また、その近辺の林齢15~50年の二次林4箇所にプロットを設置して樹木の直径調査を行いました。各樹種の個性が明らかに切り株の調査からは、萠芽しやすい樹種(例:図1上)と萠芽しにくい樹種(例:図1下)が区別されました。調査結果を表1にまとめると、コナラ・ミズナラ・クリがもっとも萠芽能力が高く、カエデの仲間やミズキ・コシアブラ・リョウブなどの萠芽能力は低いといえました。萠芽本数がピークとなる地際直径は概ね10~20cmで、萠芽能力が失われる地際直径は30~50cmでした。萠芽能力の高い樹種ほど、大きい直径まで萠芽能力を保持している傾向がありました。林齢でみると・・・上述の結果と直径成長のデータから、萠芽能力がピークとなる林齢、萠芽能力が失われる林齢を逆算すると、樹種を問わず、それぞれ30~40年、50年~60年と推定されました。里山二次林の管理への応用以上のことから、里山二次林を萠芽更新で維持しようとするのなら、伐採前にナラ類やサクラ類などが多いこと、林齢が50年未満であることなどが条件であることがわかります。里山二次林の管理は、樹種の特性をふまえて進めていく必要があります。これらの成果の一部は、H24年3月に林野庁から公表された「天然更新完了基準書作成の手引き(解説編)」に引用され、全国自治体における天然更新完了基準の作成に反映されることとなりました。また、当研究所の「樹木データベース」で樹種ごとのデータを公開しています。本研究は環境省地球環境保全等試験研究費(公害一括)プロジェクト「種特性に基づいた里山二次林の多様性管理技術の開発」(平成22~24年度)による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p50-51.pdf |
カテゴリ | かえで 管理技術 くり さくら データベース 低コスト |