タイトル | 第2世代のマツノザイセンチュウ抵抗性品種の新たな品種開発 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
松永 孝治 千吉良 治 倉原 雄二 高橋 誠 倉本 哲嗣 |
発行年度 | 2013 |
要約 | マツノザイセンチュウ抵抗性品種同士の子供から、より抵抗性の高い5品種を開発し、第2世代の抵抗性品種の開発が本格化しました。 |
背景・ねらい | 潮風や飛び砂等から生活環境を守る海岸クロマツ林はマツ材線虫病によって深刻な被害を受け続けています。これまでに、病気に強い抵抗性品種の開発に取り組んできましたが、依然として被害が著しい九州地域ではより抵抗性の高い品種の開発が求められています。そこで、これまでに開発されている品種同士の子供(後代)を育成し、より抵抗性の高い第2世代品種5品種を新たに開発しました。すでに開発していた2品種と合わせて7品種となり、第2世代品種の開発が本格化しました。これらの品種の活用によって、より抵抗性の高い苗木が生産され、海岸クロマツ林の再生に貢献することが期待されます。 |
成果の内容・特徴 | 海岸クロマツ林とマツ材線虫病日本は四方を海に囲まれており、沿岸地域の住居や田畑はクロマツ等で構成される海岸林によって海からの潮風や飛び砂から守られてきました。しかしながら、20世紀初め頃から、クロマツやアカマツの集団枯損をもたらすマツ材線虫病(松くい虫やマツ枯れと呼ぶ場合もあります)が全国に蔓延し始め、各地のクロマツの海岸林が失われています。マツノザイセンチュウ抵抗性品種九州育種場をはじめ、林木育種センターではマツ材線虫病への対策の一つとして、関係各県の研究機関等と連携して病気に感染しても枯れにくい、マツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発を進めてきました。材線虫病の激害林分において健全であったマツから、接ぎ穂や種子を採取して増殖し、病原体であるマツノザイセンチュウを人工的に接種します(図1)。その後、枯れの被害が現れずに健全で、病気に強いことが確認されたマツを抵抗性品種としました。クロマツでは平成25年3月までに全国で121品種が第1世代の抵抗性品種として選抜されています。クロマツの第2世代抵抗性品種の開発九州地域では依然マツ材線虫病による被害がみられ、さらに抵抗性の高い品種が求められています。そこで、第1世代の抵抗性品種同士を人工的に交配して第2世代の抵抗性品種を開発する取り組みを進めてきました(図2)。これまでの研究成果によって材線虫病に対するマツの抵抗性は遺伝することが分かっているため、抵抗性品種同士の子供には両親の抵抗性を併せ持った、より抵抗性の高いマツが含まれていると考えられます。第2世代品種の開発では、従来の抵抗性品種の開発時よりも、高い病原力を持つマツノザイセンチュウを接種して、第1世代の抵抗性品種より高い抵抗性を持つ5つの品種を新たに開発しました(図3、図4)。より抵抗性の高いマツ苗木の生産今回、開発した第2世代の抵抗性品種とこれまでに開発されている2品種を合わせると、クロマツの第2世代抵抗性品種は7品種となり、その開発が本格化してきました。今回開発した品種を抵抗性マツの採種園*に活用することで、より抵抗性の高い苗木が生産され、マツ材線虫病被害にあった海岸マツ林の再生に貢献することが期待されます。健全なマツ林を作るには様々な遺伝的な素地を持つ品種からの種子を用いることが望まれます。今後も継続して多様な第2世代抵抗性品種の開発に取り組み、より抵抗性の高いクロマツ苗木の生産を目指します。 本研究は、「課題名:国土・環境の保全に資する品種の開発」による成果です。 *採種園 優れた特性を持つ種子を生産するために、遺伝的に優れた特性を持つ品種等を集めて植栽した樹木園。 *健全率 抵抗性の個体を選抜する時に用いる指標の一つ。線虫を接種しても枯れず、なおかつ健全に生育した苗木の割合を表す。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p52-53.pdf |
カテゴリ | 育種 抵抗性 抵抗性品種 品種 品種開発 |