テリハボクの遺伝変異を解明する

タイトル テリハボクの遺伝変異を解明する
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 花岡 創
加藤 一隆
鈴木 節子
発行年度 2013
要約 台湾から沖縄、小笠原諸島のテリハボク島嶼集団についてDNAを分析し、それら3地域間で遺伝的な組成が異なることを明らかにしました。
背景・ねらい テリハボクは熱帯・亜熱帯海岸域に広く分布し、沖縄では防風林として活用されている主要樹種の一つです。林木育種センターでは、国内外のニーズに応えるため、耐風性、耐潮性、成長、材質等に優れたテリハボクの選抜を進めています。また同時に、国内外から広く収集した遺伝資源の保存にも取組んでおり、遺伝資源の特性評価の一環としてDNAマーカーを用いた天然林の遺伝的組成や遺伝的多様性の評価を行っています。台湾、沖縄(先島諸島および南大東島)および小笠原諸島の各島のテリハボク天然個体について調査した結果、これら3つの地域間で遺伝的組成が異なっており、また、遺伝的多様性のレベルにも差があることを明らかにしました。
成果の内容・特徴

テリハボク試料の収集

テリハボクはオトギリソウ科の常緑高木で、ハワイ島、太平洋諸島、東南アジア、インド、マダガスカル、東アフリカなどの熱帯・亜熱帯の海岸域に広く分布します。沖縄では防風林として(図1)、海外では種子オイルの活用が盛んです。林木育種センター海外協力部では耐風性、耐潮性、成長、材質等に優れた系統を選抜するため、過去の多くの台風に耐えてきた大径木や、材としての活用が見込まれる通直性の高い個体から種子を採取して実生を育成し、西表熱帯林育種技術園内にて形質評価を行っています。この育種素材の収集にあたっては、沖縄の全分布域はもとより台湾林業試験所や太平洋共同体事務局と共同研究契約を締結し、台湾、フィジー、バヌアツ、トンガなどの国々からの収集も行いました。これらの取組みに加え、遺伝資源の特性評価の一環として環太平洋域における天然林の遺伝的組成や多様性の解析に取組んでおり、この実現に向けて、まずは分布北限域(図2)に分布する多数の個体からDNA分析用の葉試料を収集しました。

遺伝変異の解析

テリハボクの種子は海に流出しても浮揚する能力が高く、海を渡って他地域の海岸域に流れ着いて定着することができる海流散布植物で、移動分散能力が高いと考えられます。上述のテリハボク分布北限地域から収集した試料のDNAを分析して各島での遺伝的組成を調べた結果、各諸島内の島間ではある程度の頻度で遺伝子流動が成立してきた可能性が高いことや、台湾、沖縄(先島諸島および南大東島)、小笠原諸島の3つの地域間では明瞭な遺伝的分化があることがわかりました(図3)。その他、台湾島で遺伝的多様性が比較的高い傾向にあること、小笠原諸島で特に低い傾向にあることがわかりました。また、先島諸島の中でも、近年の農地開発等で個体数が大幅に減少したと考えられる与那国島や波照間島においては、近隣の島よりも遺伝的多様性が低い傾向にあり、島嶼集団における遺伝的多様性の脆弱性が示唆されました。これらの情報はコアコレクション*を作成して西表熱帯林育種技術園に保存することにも活かされます。
今後は、南太平洋州を中心に、さらに多くの地域から試料を収集し、遺伝変異の解析を進めていきます。

*コアコレクション
保存遺伝資源の中から選定した代表的な品種・系統のセットのこと。
図表1 235904-1.jpg
図表2 235904-2.png
図表3 235904-3.png
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p54-55.pdf
カテゴリ 亜熱帯 育種 遺伝資源 DNAマーカー 品種

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