サクラ栽培品種の分類体系の再編とデータベース化

タイトル サクラ栽培品種の分類体系の再編とデータベース化
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 吉丸 博志
勝木 俊雄
岩本 宏二郎
加藤 珠理
松本 麻子
長谷川 絵里
佐橋 憲生
秋庭 満輝
伊東 宏樹
石原 誠
高畑 義啓
河原 孝行
赤間 亮夫
阿部 恭久
石尾 将吾
中村 健太郎
発行年度 2013
要約 200種類を超える多数のサクラ栽培品種について、形質と遺伝子の解析に基づいて正確な再分類を行いました。さらに、サクラの病害研究の成果も加えて、各クローンの特性を記述するデータベースを作成しました。
背景・ねらい 日本には約10種の野生のサクラが自生していますが、これらをもとにして古い時代から、花を観賞するための様々な栽培品種が育成されてきました。栽培品種は接ぎ木などのクローン増殖により代々保存されてきましたが、長い年月の間には継承の間違いもあり、多くの混乱が生じていました。そこで、多摩森林科学園などに収集されている多数のサクラ栽培品種を対象として、花などの外部形態の詳細な観察と、遺伝子マーカーによる遺伝子型の解析に基づき、正確な再分類を行いました。また、各栽培品種の遺伝子型に基づいて、その栽培品種の成立に関与する野生種の推定も行いました。さらに、サクラの病害研究の成果も加えて、各クローンの特性を記述するデータベース及び一般向けの解説冊子を作成しました。
成果の内容・特徴

研究の背景

近年、分類と識別に混乱がみられるサクラの伝統的栽培品種を対象に、遺伝子解析により正確に識別する技術を開発しました。この手法を用いて、多摩森林科学園などに収集されている多数の栽培品種について花などの形態形質と遺伝子型を網羅的に解析して、正確な再分類を行いました。

遺伝的識別と系統関係

多摩森林科学園のサクラ保存林の他、国立遺伝学研究所や新宿御苑の植栽個体を加えて、計1,479個体について、個体の識別能力の高い17座のSSRマーカーを用いてDNA分析を行った結果、222クローン、215栽培品種にまとめられました。また、各栽培品種の起源を推定するために、多型性の高い26座のSSRマーカーを用いて、その成立に関与したと思われる野生分類群の推定を行いました(図1)。多くの場合は外部形態に基づく従来の推定をおおよそ反映するものでしたが、外部形態だけでは検出できない関係も示唆されました。

系統による病害傾向の解析

幼果菌核病のサクラ各系統の葉への罹病程度は、カラミザクラ、カンヒザクラ、マメザクラの系統に高い傾向が見られました。本病の葉と実の罹病は、開葉時期の早い栽培品種に葉の罹病率が高く、開花の遅い栽培品種に果実の罹病率が高く、開葉と子嚢胞子の飛散及び開花と分生胞子の飛散の時期が合うと罹病率が高まると考えられました。保存林内で発生している増生病は細菌性こぶ病と連鎖球型かいよう症であり、後者は糸状菌性病害と考えられ、樹体の衰弱への関与が認められました。調査木44品種222本のうち43品種208本の樹木に腐朽が確認され、腐朽度の高い品種は‘市原虎の尾’など4品種でした。16種の腐朽菌の子実体が同定され、腐朽枝から37菌株が分離されました。

統合データベースの構築

サクラ保存林の個体データについては、収集時及び現在の個体データをもとに、714ラインにまとめられました。これらのラインのうちDNAを分析することが出来た552ラインについて、遺伝解析の結果を検討し、学名などを再編しました。また、分類情報データについては、およそ13,000件を226分類群に対応させました。
これらの情報はデータベース化して、ホームページ(http://db1.ffpri-tmk.affrc.go.jp/sakura/home.php)で公開しています。また、一般向けの解説冊子「桜の新しい系統保全-形質、遺伝子、病害解析からの取組-」(http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/3rd-chuukiseika5.html)(図2)を作成しました。

本研究は森林総合研究所交付金プロジェクト「サクラの系統保全と活用に関する研究」による成果です。詳しくは、Kato et al (2012) Breeding Science 62:248-255をご覧ください。
図表1 235906-1.png
図表2 235906-2.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p58-59.pdf
カテゴリ さくら 接ぎ木 データベース 品種

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