タイトル |
圃場排水性を改善して施肥・播種を1工程で行うチゼル式不耕起播種機 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2011~2012 |
研究担当者 |
国立卓生
大下泰生
小島 誠
アグリテクノ矢崎(株)
スガノ農機(株)
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発行年度 |
2012 |
要約 |
条毎にチゼルで排水溝を作溝し、同時に施肥・播種を行うトラクタ直装式の不耕起播種機で、降雨後の排水が促進され、大豆収量は1割程度向上する。作業幅は1.5~2.4mで、条間は30~80cmまで変更でき、30kW(40PS)程度のトラクタから適応できる。
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キーワード |
チゼル、不耕起播種機、大豆、圃場排水性、収量改善
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背景・ねらい |
従来の不耕起栽培では、排水性の劣る圃場に導入すると、湿害による出芽不良やダイズ茎疫病の発生によって減収しやすい課題がある。また、比較的大型のトラクタ体系を対象とし、基盤整備の行われた圃場での使用を想定している。そこで、比較的規模の小さい体系や、多様な圃場・栽植様式にも対応するため、より小型のトラクタに適応し、排水性の劣る圃場にも導入できる不耕起播種機を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 開発機は、作物残渣の絡みにくいブーツ型をしたチゼル、砕土・整地を行うクランブルロ-ラ、肥料導管の排出口の変更により直下施肥と側条施肥の切り換えが可能な施肥装置、ダブルディスクで覆土性能の高い播種装置等で構成され、トラクタ3点リンクに直装する。チゼルは播種条毎に1本ずつ装備し、作物残渣の排除を円滑に行うため千鳥に配置する。チゼルや播種装置はユニット構造でフレームに取り付けられており、着脱・移動が容易で、条間は30~40cmの5条播種(作業幅1.5~2.0m)から条間80cmの3条播種(作業幅2.4m)まで、多様な栽植方式に対応する(図1)。
- 播種作業は(1)チゼルで条毎に深さ13cm程度の排水溝を切る(溝幅は2~5cm程度)、(2)必要に応じて、施肥装置で溝底もしくは側条に施肥する、(3)クランブルローラで表層を砕土・整地する、(4)播種装置で排水溝の中心から約5cm側方に播種、覆土、鎮圧する、の順番に1工程で行われ、排水溝から播種までの距離は一定に保たれる(図2)。
- けん引力は、水田輪換畑(壌土)において作業速度1.0m/sの時、約10kNであり、5条播種するときに適応するトラクタは、質量が約2t(2輪駆動、けん引係数50%と仮定)で、機関出力は30kW(40PS)クラスである。
- 開発機は、作業幅1.5m、作業速度約1.35m/sの時、圃場作業量0.43ha/hで、燃料(軽油)消費量は0.73L/10aである。小麦の自脱コンバイン収穫跡(麦稈長13cm以下)では麦稈の前処理を行わなくても大豆播種作業に支障はない。
- 開発機で播種した圃場の土壌水分は、浅い播種溝(幅2cm、深さ3cm程度)のみの慣行の不耕起栽培圃場(ディスク駆動式不耕起播種機NSV600による播種)と比較して降雨後速やかに低下し、圃場排水性が高まる(図3)。
- 開発機を用いた大豆作は、排水不良によって低収化した慣行の不耕起栽培圃場に比べると平均して1割程度増収し、慣行の耕起栽培圃場に比べると2割程度増収する(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:水田輪換畑など、降雨による湿害の影響を受けやすい圃場(地下水位の高い場合は除く)に不耕起栽培を導入する10~30ha程規模の農業経営体。大豆のほか、水稲乾田直播、麦類などにも利用できる。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の水田転作地帯を中心に5年間で数十台普及すると見込まれる。
- その他:平成25年度中を目処に市販化予定。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2012/111b3_02_04.html
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カテゴリ |
肥料
乾田直播
経営管理
湿害
市販化
出芽不良
水田
施肥
大豆
排水性
播種
不耕起栽培
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