外来遺伝子を使用しない標的遺伝子欠損細菌株の作出法

タイトル 外来遺伝子を使用しない標的遺伝子欠損細菌株の作出法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2011~2012
研究担当者 井上康宏
畔上耕児
発行年度 2012
要約 本法は、欠損標的遺伝子の前後部分をPCRによって増幅・結合させてから環状化し、野生株に形質転換して相同組換えによる遺伝子欠損を誘発させるもので、遺伝子欠損株は、PCRを用いた姉妹選抜法により選抜する。
キーワード 病原性細菌、遺伝子欠損株、生物多様性、セルフクローニング
背景・ねらい 病原性細菌の病原性関連遺伝子を破壊した株は、その病害に対して防除効果を持つことが知られているが、アクリジンオレンジやUV等による変異の誘発では標的とする遺伝子のみが破壊された株を得ることは非常に困難であり、これら変異源は人体に対しても有害である。一方で既存の標的遺伝子破壊方法は薬剤耐性遺伝子やベクターなどの外来遺伝子を利用するため、遺伝子破壊株は組換え体となり、生物多様性確保に対する配慮からその使用が規制されている。そこで病原性関連遺伝子破壊株の農業利用を目指し、外来遺伝子を全く使用しない、生物多様性への影響が少ない標的遺伝子欠損株作製および分離手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 図1に示すように、欠損標的遺伝子の周辺にプライマーを設計する。遺伝子を欠損させたい株(親株)からプライマー1、2およびプライマー3、4を用いたPCRで増幅させたDNAを混合し、プライマー1、4を用いて再度PCRを行うことで上流領域と下流領域が結合され、標的遺伝子が欠損したDNAが作製される。
  2. 図2に示すような方法で、標的遺伝子が欠損した株の作製と分離ができる。
  3. 形質転換はエレクトロポレーション法で行う。形質転換するDNAを、T4Ligase等を用いて環状化することで、形質転換効率が向上する。
  4. DNase Iを含む1mlの培地で前培養を行い、形質転換に用いたDNAを除去する。これによりPCRによる遺伝子欠損株検出の際に非特異増幅が抑えられる。
  5. 選抜にプライマー5、6とプライマー7、8の組合せを用いたnested-PCRを行うことで、遺伝子欠損株の検出感度が向上する。
  6. これまでにアブラナ科野菜黒腐病菌とナス科野菜青枯病菌の、650bp-20kbpまでの病原性関連遺伝子の欠損に成功している。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法はセルフクローニング(同種の細胞由来のDNAのみを用いた遺伝子組換え)に分類されるもので、作製された微生物のカルタヘナ法*上の取扱いについては個別に検討されることとなっている(参考:カルタヘナ法上のセルフクローニング及びナチュラルオカレンスに該当する微生物について、平成25年1月7日農林水産省消費・安全局)。本手法によって作製された細菌株の使用を検討する際には、文部科学省ライフサイエンス課、農林水産省消費・安全局農産安全管理課等の関係部局まで事前に問い合わせが必要である。(*カルタヘナ法:遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号))
  2. 本手法によって作製したアブラナ科野菜黒腐病菌の病原性関連遺伝子破壊株は、黒腐病防除効果があることを温室内の接種試験で確認している。
図表1 235931-1.png
図表2 235931-2.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2012/152a0_02_02.html
カテゴリ 病害虫 青枯れ病 あぶらな 安全管理 くり なす 防除 薬剤耐性

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