ナシの自家和合性S4smの花粉は、花柱のS1S4双方と不和合性を示す

タイトル ナシの自家和合性S4smの花粉は、花柱のS1S4双方と不和合性を示す
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2000~2012
研究担当者 齋藤寿広
佐藤義彦
澤村 豊
正田守幸
高崎剛志
壽 和夫
発行年度 2012
要約 自家和合性遺伝子S4smの花粉は、花柱のS4だけでなく、S1とも不和合となり、S4S4smS1S4smの遺伝子型は自家不和合となる。一方、S2S3S5S7S9およびSkの花柱とS4sm花粉とは和合であり、これらとS4smとのヘテロ接合体は自家和合性を示す。
キーワード ニホンナシ、花粉突然変異、なし中間母本農1号、自家(不)和合性
背景・ねらい ニホンナシはS-RNaseが花柱因子として自家花粉管を分解し伸長を抑制する配偶体型の自家不和合性を示すため、現状の栽培においては人工受粉が必須となっている。これに対して、自家和合性品種の育成はその省力化に寄与できると考えられる。「おさ二十世紀」由来の自家和合性ハプロタイプS4smは、花粉は変異していないと考えられているのに対し、花柱が花粉管伸長を阻害しないように変異していることから自家和合性を示す。このため、S4smを含む遺伝子型では、S4S4smが自家不和合性を示す(花柱のS4が、S4S4sm両方の花粉と不和合性を示すため)ものの、それ以外は自家和合性となることが期待できる。そこで、これまでに育成したS4smのホモ接合体である「なし中間母本農1号」を用いて、その後代のS遺伝子型と自家和合性の関係について調査し、自家和合性の遺伝様式について検討する。
成果の内容・特徴
  1. 「なし中間母本農1号」(S4smS4sm)を種子親に、「晩三吉」(S5S7)、「八幸」(S4S5)およびリ-14(S1S2)をそれぞれ花粉親とした後代について自家受粉すると、晩三吉との後代(S5S4smS7S4sm)は全て自家和合性を示し、残り2組合せから生じた後代では自家和合性と自家不和合性個体が1:1の頻度で出現する。「八幸」との後代における自家和合性と不和合性個体の遺伝子型を確認したところ、それぞれS5S4smS4S4smであり、後者はS4smの花粉が花柱のS4と不和合性を示すことを示唆する。一方、リ-14との後代では、自家和合性と不和合性個体の遺伝子型はそれぞれS2S4smS1S4smである。(表1)
  2. 「独乙」(S1S2)の花柱に「二十世紀」(S2S4)の花粉が和合性であるのに対し、「おさ二十世紀」(S2S4sm)の花粉は不和合性を示す。さらに、「なし中間母本農1号」の花粉はS1を有する品種すべてに不和合性を示す(表2)。
  3. 以上のことから、S4smの花粉はS4の花粉と異なり、花柱のS1とも不和合性を示すように変異している。すなわち、S1S4smの遺伝子型が自家不和合性を示す理由は、花柱S1S1S4sm両方の花粉と不和合性を示すためであると考えられる。これに対して、花柱のS3S5S6S9およびSkS4smの花粉とは和合性を示す(表2)ため、表1の結果と併せて、S2S3S5S7S9およびSkS4smとのヘテロ接合体は自家和合性を示すと考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. S4smを有する品種を用いた自家和合性品種育成において、これを種子親とする場合、花粉親の遺伝子型がS1S4では、自家和合性個体を獲得できない。一方、花粉親とする場合は、種子親がS1あるいはS4のいずれかを有していると獲得できない。
  2. S-RNaseで制御されている自家不和合性植物において、このような花粉突然変異の例は他に見られないので、自家不和合性機構の解析に利用できる。
図表1 235957-1.png
図表2 235957-2.png
図表3 235957-3.png
図表4 235957-4.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2012/142a0_03_03.html
カテゴリ 自家和合性品種 受粉 省力化 品種

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