ニホンナシ「幸水」の一年枝および花芽における冬季の糖代謝の特徴

タイトル ニホンナシ「幸水」の一年枝および花芽における冬季の糖代謝の特徴
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2009~2011
研究担当者 伊東明子
阪本大輔
森口卓哉
発行年度 2012
要約 冬季の「幸水」の糖代謝には、(1)枝のデンプンが糖に分解される時期(11月下旬~12月中旬頃)、(2)枝から導管液に糖が輸送される時期(12月下旬頃)、(3)花芽の糖取り込みと利用が増加する時期(1月中下旬頃)、の3つの特徴的なステージが認められる。
キーワード ニホンナシ、休眠、耐凍性、糖、デンプン
背景・ねらい 永年性植物である落葉樹では秋季に炭水化物を十分蓄積し、その炭水化物を可溶性糖に変換することにより耐凍性を高めていることが知られている。一方、秋季に樹体に蓄積された炭水化物は春の萌芽のエネルギー源でもあることから、その動態は休眠ステージの進行に伴い厳密に制御されていると考えられるが、その詳細は明らかでない。
そこで、近年ニホンナシの栽培現場で顕在化しつつある春先の萌芽不良現象の機構解明に資するため、休眠ステージの進行に伴う糖動態を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 果樹研つくば植栽の「幸水」樹から切り枝(一年枝)を採取し、加温処理して休眠ステージを判定すると、2009年~2010年では休眠覚醒期は12月15日~1月4日頃である。
  2. 枝に貯蔵されたデンプンは12月上旬頃から可溶性糖に分解されはじめ(図1A)、腋花芽と枝に蓄積される(図1A、B)。
  3. 12月下旬頃、主要な転流糖であるソルビトールを導管液へ積み出すソルビトールトランスポーター遺伝子(PpSOT2)の発現が枝において大きく上昇する(図2A)。それに伴い導管液のソルビトール含量が大幅に増加する(図1C)。
  4. 1月中下旬頃、ソルビトールを導管液から取り込むソルビトールトランスポーター遺伝子(PpSOT3)の発現が腋花芽において大きく上昇する(図2B)。また、ソルビトールを異化(分解)するNAD依存型ソルビトール脱水素酵素活性が腋花芽で大きく上昇する(図3)。
  5. 以上より、冬季の「幸水」の枝および花芽の糖代謝には、(1)枝のデンプンが糖に分解される11月下旬~12月中旬頃(自発休眠覚醒前)、(2)枝から導管液に糖が急激に輸送される12月下旬頃(自発休眠覚醒期)、(3)花芽の糖取り込みと利用が増加する1月中下旬頃(自発休眠覚醒後)、の3つの特徴的なステージが認められる。
成果の活用面・留意点
  1. 12月下旬の導管液のソルビトール含量の増加は非常に顕著であり、増加のタイミングにより休眠覚醒時期を判定できる可能性がある。また、花芽の糖取り込みが増加するタイミングから施設栽培での好適加温時期を判定できる可能性がある。
  2. 冬季花芽の糖代謝は、休眠ステージの進行だけでなく耐凍性にも関係することから、ニホンナシの発芽不良の機構解明の有用な情報となる。
図表1 235983-1.png
図表2 235983-2.png
図表3 235983-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2012/210b0_01_05.html
カテゴリ 施設栽培 発芽不良 輸送

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