タイトル |
ニラのアポミクシスを構成する複相大胞子形成と単為発生の遺伝様式 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 |
研究期間 |
1998~2012 |
研究担当者 |
山下謙一郎
中澤佳子
生井 潔
天谷正行
塚崎 光
若生忠幸
小島昭夫
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発行年度 |
2012 |
要約 |
ニラのアポミクシスの構成要素である複相大胞子形成と単為発生は、作用力の大きな異なる優性遺伝子に制御される。単為発生には、その前提として複相大胞子形成が必要である。
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キーワード |
ニラ、アポミクシス、複相大胞子形成、単為発生
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背景・ねらい |
アポミクシスは母親とまったく同じ遺伝子型の種子を生じる生殖様式であり、主要作物に導入できれば、ヘテロシスの固定、品種育成年限の短縮および採種コストの削減が可能となり、育種に飛躍的な効率化をもたらす。ニラの多くの品種・系統は四倍体であり、かつ高頻度のアポミクシス性を示す。ニラのアポミクシスは、複相大胞子形成(胞原細胞での核内倍加および減数分裂を経由した2n胚のう形成)と単為発生(受精を必要としない胚発生)の2つの構成要素により特徴付けられる。両形質の遺伝性(優性または劣性)、想定される遺伝子数および表現型の遺伝的関係を明らかにすることは、ニラのアポミクシスの育種利用のための基盤となる。そこで、二倍体素材を用いて分離集団を育成し、両形質の遺伝様式を詳細に明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- ニラ両性生殖性二倍体(94Mo13、94Mo49、94Mo50)を種子親、アポミクシス性二倍体KaD2を花粉親とする交配により作出したF1は、三倍体(2n=24)と二倍体(2n=16)に分離し、三倍体はアポミクシス性(複相大胞子形成性および単為発生性)、二倍体は両性生殖性である。したがって、ニラのアポミクシスは優性に遺伝し、KaD2はアポミクシス遺伝子座(複相大胞子形成遺伝子座および単為発生遺伝子座)についてヘテロである(図1)。
- 94Mo49を種子親、アポミクシス性三倍体F1を花粉親とする戻し交雑により作出したBC1集団(2n=16-24)において、複相大胞子形成性を示す二倍体および単為発生性を示す二倍体は出現しない(図1)。
- BC1集団において、複相大胞子形成性と単為発生性は二極的な分離を示す(図2)。また、複相大胞子形成性で、かつ非単為発生性(D-S)を示す個体が出現することから(図3)、複相大胞子形成と単為発生は、作用力の大きな異なる遺伝子に制御される。
- BC1集団において、単為発生性個体はすべて複相大胞子形成性を示し(D-P)、単為発生性のみを示す個体(E-P)は出現しない(図3)。したがって、単為発生には、その前提として複相大胞子形成が必要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 94Mo13、94Mo49、94Mo50およびKaD2は、農業生物資源ジーンバンクにJP219386、JP219387、JP219388およびJP219392として登録済みである(2003年度成果情報)。また、F1およびBC1集団の提供には、共同研究契約または研究試料提供に関する契約の締結が必要である。
- KaD2の複相大胞子形成性と単為発生性は一倍性配偶子から次代に伝達されないことから、両形質を制御する遺伝子と連鎖する劣性有害遺伝子の存在が示唆される(図1)。
- アポミクシス性を有する低三倍体(BC1、2n=21-23)を一回親、両性生殖性二倍体を反復親とする戻し交雑により、劣性有害遺伝子との連鎖が打破されたアポミクシス性二倍体育成の可能性がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2012/113b0_01_05_.html
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カテゴリ |
育種
コスト
にら
品種
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