泌乳牛へのメチオニン給与はグレリン分泌を促進する

タイトル 泌乳牛へのメチオニン給与はグレリン分泌を促進する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2011~2012
研究担当者 櫛引史郎
新宮博行
小林寿美
山地佳代子
守谷直子
発行年度 2012
要約 泌乳牛に長鎖脂肪酸カルシウムを給与するとグレリン分泌が高まり、ルーメンバイパスメチオニンを併給するとさらにグレリン上昇する。この機構は、脂質代謝に対するメチオニンの制御作用と関連する。
キーワード 泌乳牛、メチオニン、グレリン
背景・ねらい 乳牛の泌乳能力の向上とともに、高エネルギー飼料の利用も増えている。特に長鎖脂肪酸カルシウム(LCFA-Ca)はエネルギー供給を目的として広く普及しているが、同時に内因性のグレリン分泌を増加させることが報告されている。グレリンは成長ホルモンの分泌促進や採食量増加、エネルギー調節に重要な働きを担っている消化管ホルモンである。一方、実験動物ではメチオニン(Met)が脂質代謝を介してグレリン分泌を刺激することが証明されており、乳牛においてもMetによるグレリン分泌促進の可能性が考えられる。 本研究では、長鎖脂肪酸カルシウムとルーメンバイパスMet(RB-Met)の併給によるグレリン分泌の相乗効果について検討する。
成果の内容・特徴
  1. 泌乳中期から後期の乳牛にLCFAを乾物中1.5%、RB-Metを1日20g給与する。試験処理区をLCFA-Ca区、RB-Met区、LCFA+Met区、対照区とする。試験は1期2週間の4×4ラテン方格で実施する。
  2. LCFA-Ca区では対照区に比べて血漿グレリン濃度が高まる。RB-Metを併給するLCFA+Met区のグレリン濃度は、LCFA-Ca区をさらに上回る(図1)。RB-Metだけを給与するRB-Met区の血漿グレリン濃度は対照区と同じレベルである。
  3. 1日当たりの乾物摂取量は、LCFA-Ca区が対照区に比べて有意に低下するが、RB-Metを併給することで乾物摂取量の有意な減少は認められなくなる(図2)。RB-Met区の乾物摂取量は対照区と同程度である。
  4. 血漿中遊離脂肪酸(NEFA)、中性脂肪(TG)、および総コレステロール(T-CHO)濃度は、LCFA-Ca給与によって高まるが、LCFA+Met区では対照区およびRB-Met区と変わらないレベルを示す(図3)。
  5. これらの結果は、Metがグレリン分泌増加の促進および乾物量摂取低下の抑制に有効な機能性成分であることを示唆している。
成果の活用面・留意点
  1. 高泌乳牛の栄養管理にRB-Metを有効利用するための知見である。
  2. 栄養素によるグレリン分泌制御の可能性につながる成果である。
  3. 本成果は泌乳前期の乳牛では未検討である。
  4. 中鎖脂肪酸カルシウムの給与でもグレリン分泌は促進されるが、RB-Metの併給によるグレリン濃度の更なる増加は認められない。
図表1 236036-1.png
図表2 236036-2.png
図表3 236036-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2012/130d0_01_05.html
カテゴリ 機能性成分 乳牛

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