タイトル |
日本の草地における土壌炭素量およびその地理的分布の推定 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2004~2011 |
研究担当者 |
松浦庄司
佐々木寛幸
神山和則
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発行年度 |
2012 |
要約 |
1990年付近の日本の草地面積の推定値は18,700km2であり、国土面積の5.0%を占める。北海道~本州東部や阿蘇地域等の黒ボク土に立地する草地には土壌炭素が多く含まれる。草地の土壌炭素量(0-30cm)は国土全体の土壌炭素量(0-30cm)の8.0%を占める。
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キーワード |
草地、草地面積、土壌炭素、地理的分布
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背景・ねらい |
土壌有機物は土壌微生物や植物に養分を供給するだけでなく、団粒形成や養分の保持など、土壌の生物性、物理性、化学性を改善する重要な働きを持つ。草地における土壌有機物の現存量や変化量を把握することは、その生産性や土壌の健全性を評価する上で重要である。しかしながら、これまで日本では草地の土壌炭素量やその分布について十分に把握されてこなかった。本研究は、草地の面積と土壌炭素量およびそれらの地理的分布を、デジタルデータを用いて推定することを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- 草地における土壌炭素量の地理的分布の推定手順は以下の通りである(図1)。1)植生調査および湿地調査ベクタデータを重ね合わせ、草地部分を抽出することにより、1990年付近の草地の面積および地理的分布を推定する(図2)。2)地力保全代表断面データより算出した各断面の土壌炭素量を土壌図ベクタデータおよび土地分類メッシュデータに組み込む。3)これらを統合することにより、草地における土壌炭素量およびその地理的分布を推定する(図3)。
- 日本の全草地面積の推定値は18,700km2であり、国土面積の5.0%を占める。草地タイプ別の面積は、自然草地3,300km2、半自然草地6,190km2、牧草地(農業利用の人工草地)8,480km2、非農業利用の人工草地(ゴルフ場、飛行場等)770km2である(図2)。
- 牧草地の土壌における単位面積当たり土壌群(農耕地土壌分類第2次改訂版)別炭素量(0-30cm)は、4.0-24.0kgCm-2と推定され、いずれの土壌群においても全地目についての推定値より大きい傾向にある(表1)。
- 日本の全草地における土壌炭素量(0-30cm)の推定値は214TgC(1Tg=100万t)であり、国土全体の土壌炭素量(0-30cm、2680TgC、Morisada 2004)の8.0%を占める。また、日本の草地全体の単位面積当たり土壌炭素量(0-30cm)は11.4kgCm-2と推定される。土壌炭素量の多い草地は、主に北海道~本州東部や九州の阿蘇地域等の黒ボク土が見られる地域に分布する。土壌炭素量の少ない草地は、山地、河川沿い、西日本の赤色土や黄色土の見られる地域等に分布する(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 草地の生産性の指標の一つである土壌有機物量の全国分布を示す基礎資料として、草地の肥培管理計画等の立案の際に有用な情報となる。
- 温室効果ガスインベントリー作成の際に、草地の土壌炭素変化量を算定するための基礎的なデータとなる。
- 推定した土壌炭素量は1959−1978年の牧草地における土壌断面データに基づいている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2012/420b0_05_08.html
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カテゴリ |
肥培管理
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