ヒメトビウンカの海外からの飛来を予測する方法

タイトル ヒメトビウンカの海外からの飛来を予測する方法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2010~2012
研究担当者 大塚 彰
真田幸代
松村正哉
発行年度 2012
要約 飛来源と考えられる中国東部での年初からの有効積算温度を用いて、越冬後第一世代の羽化日を予測する。その羽化日を含む9日間の移出期間に、ヒメトビウンカ用飛来予測モデルを用いて中国東部からウンカを移出させ、高い予測精度で飛来を予測できる。
キーワード ヒメトビウンカ、飛来予測、長距離移動シミュレーションモデル、羽化日推定
背景・ねらい ヒメトビウンカは国内で越冬可能で、土着個体群がイネ縞葉枯病を引き起こすと考えられてきたが、2008年以降日本や韓国などで中国東部からの飛来が起こり、イネ縞葉枯病を発生させている(2010年度成果情報)。こうした6月上旬に起こる越冬後第一世代の海外からの飛来を予測し事前に警戒するとともに、防除対策を立てるために予測される飛来地域を知ることが必要である。すでに開発されているトビイロウンカの飛来予測モデル(2003年成果情報)をヒメトビウンカに適用したところ、飛来地域を正確に予測出来なかった。そのため、ヒメトビウンカの移動実態に合った飛来予測手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 飛来予測手法は、移出期間の予測と、その期間内にヒメトビウンカの移動を予測する2つの段階からなる(図1)。
  2. 飛来源と考えられる中国東部での年初からのヒメトビウンカの有効積算温度を用いて、越冬後第一世代の羽化日を予測する。気温は飛来源である中国江蘇省の中央にある気象観測点の日別最高、最低気温のデータを用いる。
  3. 羽化日に推定誤差として羽化日前後それぞれ3日、羽化2日後に移出することを考慮して、飛来予測を行う移出期間を羽化予測日の前3日から後5日までの9日間とする。
  4. ヒメトビウンカ用飛来予測モデルは、ウンカを飛来源である中国江蘇省全域から夕方と明け方に飛び立たせる(1日2回、合計18回予測)。移動中ウンカは、風と同じ速度で移動し、気温が13℃より低い上空の領域には侵入しない(気温の天井)。
  5. 飛来予測図は、相対的なウンカの密度(ウンカ雲)を示し、ヒメトビウンカが飛来する地域と時間を1日前もしくは2日前に予測できる(図2)。
  6. 2008年から2011年までの日本、韓国での飛来事例(ネットトラップによりモニタリングデータ、図3)を用いた精度検証では、本手法による海外飛来予測の的中率は93%である。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法を基礎として、実用的なヒメトビウンカ飛来予測システムを構築できる。
  2. 飛来する地域と時期を予め知ることで、その後の害虫とイネ縞葉枯病の管理など防除対策に活用できる。
  3. ヒメトビウンカの飛来予測モデルとトビイロウンカのモデルとは、飛び立ち域の設定が、前者は多角形の江蘇省全体、後者は50kmの方形で設定すること、気温の天井の値が前者は13℃、後者は16.5℃であることが異なる。また前者は、太陽の高さを計算し正確な日の出、日の入り線を計算して省内で飛び立つ場所を正確に求めている。江蘇省は中国でヒメトビウンカとイネ縞葉枯病が最も多発している地域である。
図表1 236096-1.png
図表2 236096-2.png
図表3 236096-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/project_list/project15/2012/210d0_04_13.html
カテゴリ 病害虫 害虫 コスト 縞葉枯病 ヒメトビウンカ 防除 モニタリング

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