タイトル |
マメ科作物であるヘアリーベッチ作付け後の不耕起栽培による節肥効果とチッソ溶脱 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
南雲不二男
中村乾
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発行年度 |
2013 |
要約 |
マメ科作物であるヘアリーベッチを休耕期間中に作付け後、その残渣をマルチとして利用するトウモロコシの不耕起栽培では、チッソ施肥量を半量にしても収量が高く維持される。一方、ヘアリーベッチ残渣の土壌への還元量が多い場合には、その分解に伴い浸透水の硝酸態チッソ濃度が上昇し、チッソの溶脱量が増加する。
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キーワード |
ヘアリーベッチ、不耕起栽培、チッソ溶脱、チッソ収支
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背景・ねらい |
マメ科作物を作付け後、その残渣をマルチとして利用する不耕起栽培は、降雨の表面流出と土壌侵食を大きく抑制する、節肥が可能であるなどの様々な長所を有する(国際農林水産業研究成果情報 第14号)。その一方で、土壌に還元されるマメ科作物残渣の分解で生ずる硝酸態チッソを有効利用できないと、降雨の下方浸透増大と相まってチッソ溶脱を促進する可能性がある。本研究では、マメ科作物のヘアリーベッチ(Vicia villosa Roth.)を休耕期に作付け後、その残渣でマルチしトウモロコシを不耕起栽培する場合において、降雨の表面流出量と下方浸透量との関係を考慮しながら、チッソの溶脱と収支を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- ヘアリーベッチ作付け後のトウモロコシ栽培は、耕起の有無にかかわらず、自然休耕後の栽培(慣行栽培、チッソ施肥量:100 kg ha-1)に比べて、チッソ施肥量を半量にしても同等以上の収量が得られ、節肥が可能であることを示している。自然休耕後の無施肥では、収量がほぼゼロとなるのに対し、ヘアリーベッチ作付け後では、約70%の収量が得られる (図1)。
- ヘアリーベッチ作付け後の不耕起マルチ栽培では、ヘアリーベッチは春先のトウモロコシ作付け時に枯死し残渣マルチとなり、土壌に還元される。表1の降雨イベントの事例で硝酸態チッソ溶脱量を慣行栽培と比較すると、浸透水中の硝酸態チッソ濃度は23.5倍に上昇し、降雨の下方浸透量は1.5倍と増大したために、硝酸態チッソの溶脱量は37倍に増大している。すなわち、この溶脱量の増大は、主にヘアリーベッチ残渣の分解で生ずる硝酸態チッソ濃度の上昇に起因しており、不耕起マルチ栽培が降雨の表面流出量を減少させ、下方浸透量を増大することの影響は小さい。
- 供給される可給態チッソ量(肥料チッソ、ヘアリーベッチ由来の可給態チッソ及び土壌チッソの合計値)は、トウモロコシが吸収したチッソ量と溶脱したチッソ量の合計値とほぼ等しく、余剰に生成したチッソが溶脱していると説明できる。一方、ヘアリーベッチ作付け後の不耕起マルチ栽培のチッソ収支は、慣行栽培に比べて高く、ヘアリーベッチの作付けにより、肥沃度の持続的向上が期待される (表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本作付け体系は、降雨の表面流出低減、節肥効果など様々な長所を有しており、降水量は少ないが、激しい降雨のある地域や施肥量の限られる地域に適用が期待される。
- 一方、過剰なバイオマスの還元はチッソ溶脱による地下水汚染を引き起こす可能性を示しており、施肥チッソ量とヘアリーベッチ由来チッソ量との関係を検討し、施肥量を調整する必要がある。
- 試験は国際農林水産業研究センター熱帯・島嶼研究拠点のオープンラボ傾斜圃場(斜面長:14 m、傾斜:2.0、 3.5、 5.0度)で実施している。
- 降雨の表面流出水中に硝酸態チッソは検出されなかったためチッソ収支では考慮していない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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研究内容 |
http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2013/2013_A05.html
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カテゴリ |
肥料
施肥
とうもろこし
不耕起栽培
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