タイトル |
中国に存在する肥料資源量は食飼料生産にカリウムが不足する |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
三島慎一郎
銭小平
|
発行年度 |
2013 |
要約 |
中国における化学肥料の利用と中国のし尿、畜頭あたりの1日に排泄する、養分含有率を用いて、肥料資源量と農作物生産量からみかけの養分収支を算出した結果、穀類への化学肥料施肥と穀粒の生産で見た収支は窒素・リン・カリウムとも過剰を示しているが、作物生産全体の収支では窒素とリンの過剰、カリウムが不足する。
|
キーワード |
窒素、リン、カリウム、収支、資源量、中国
|
背景・ねらい |
中国の農業生産において、特に窒素の過剰利用が環境への負の影響を与えているといわれている。そこで近年の窒素・リン・カリウムの資源と生産を定量することを通して、肥料資源の賦存量を把握し、作物生産のために必要な肥料資源の過不足を定量し、肥料の需給並びに食料需給の施策に知見を与える。また、みかけの窒素・リン・カリウムの収支を見ることで、効率的な施肥と肥料資源管理が期待できる。
|
成果の内容・特徴 |
- 「中国農業統計年鑑」に記載されている2000・2005・2010年の化学肥料施用量、作物生産量、家畜飼養頭数、人口数を元に、「中国有機肥料養分誌」に記載されているし尿排泄および家畜ふん尿排泄量、肥料から作物に含まれる窒素・リン・カリウム量から、養分量を求める。ここで人口は総人口の半分を占める農村人口を用いている。米・麦・トウモロコシといった穀類への化学肥料施用は「中国主要作物施肥指南」から求める。
- 化学肥料とし尿・家畜ふん尿の窒素・リン・カリウムの賦存量は、窒素・リンに関しては化学肥料が、カリウムの賦存量はし尿・家畜ふん尿が主である。作物による持ち出しをみると、特にカリウムの持ち出しにおいて穀類の茎葉持ち出しが大きな位置を占める(図1.)。
- みかけの収支は、窒素では大きな過剰が見られる。リンは賦存量と持ち出し量がほぼ拮抗している。カリウムに関しては持ち出しが資源の賦存量より多くなっており、農地土壌からの収奪によるカリウム肥沃度の減少が危惧される(図2.)。
- 茎葉を含めた穀類によるカリウムの持ち出しを見ると、持ち出しが穀類へのカリウム肥料の施用を大きく超えている(図1.)。茎葉を持ち出さず農地に還元し、穀粒のみの持ち出しと化学肥料の施用の収支を見ると、窒素・リン・カリウムは十分に施用されている(図3.)。穀類茎葉を持ち出さず農地に鋤き込むかマルチとして利用することで、穀類へのカリウム施用の不足を補うことができる。
|
成果の活用面・留意点 |
- 収集し算出に用いる人のし尿・家畜のふん尿の排出原単位、作物の窒素・リン・カリウムの含有率、および統計データは電子化・データベース化しており、省別でみかけの養分収支を算出できる形になっており、地域別の養分収支に活用できる。
- 効率的な養分資源の管理と今後必要な施策に利用できる。
- みかけの収支では人のし尿・家畜ふん尿の貯留と堆肥化過程での窒素・リン・カリウムの損失、アルカリ性の土壌では化学肥料の揮発が取り入れられていない。そのため、より実態に即した収支と環境影響の定量にはこれらの要素を導入する必要がある。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
研究内容 |
http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2013/2013_C04.html
|
カテゴリ |
土づくり
肥料
カリウム施用
施肥
データベース
とうもろこし
|