タイトル |
オイルパーム廃棄木の搾汁残渣はバイオエタノールの有望な資源となる |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
小杉昭彦
Panida Prawitwong
鄧嵐
荒井隆益
村田善則
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発行年度 |
2013 |
要約 |
オイルパーム廃棄木の搾汁後の繊維残渣を柔組織および維管束に分別し、それぞれ前処理することで、高い糖化効率を有するバイオエタノール発酵生産が可能となる。廃棄木の搾汁残渣から得られる発酵可能糖に対し約82%の高変換効率でエタノールを生産することができる。
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キーワード |
バイオエタノール、オイルパーム廃棄木、糖化発酵技術
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背景・ねらい |
オイルパームは生産性を維持するために約25年間隔で伐採、再植されるが、伐採されたパーム廃棄木が大量に発生している。パーム廃棄木から搾汁により得られる樹液には、グルコースやスクロースなど発酵可能な遊離糖が豊富に含まれている。JIRCASではこの樹液からのバイオエタノールおよび乳酸生産技術を開発している1)。本研究では、オイルパーム廃棄木の樹液だけでなく、搾汁の際に排出される繊維残渣もまたバイオエタノールに変換可能な有望な資源となることを示す。
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成果の内容・特徴 |
- 樹液搾汁後の繊維残渣は柔組織と維管束で構成される(図1)。この柔組織と維管束は、その形状や重量の差を用い容易に分別できる(国際農林水産業研究成果情報 第18号)。柔組織と維管束を分別することで、柔組織中に特異的に含まれるデンプンを利用することができる3)。
- 柔組織および維管束の成分量(%, w/w)は、それぞれリグニン26.8%、23.6%、デンプン46.7%、0.2%、セルロース40.3%、49.1%、キシラン18.7% 、19.0%、アラビナン4.4%、1.1%であった。デンプン以外の成分は類似した含有量で構成されている3)。
- 搾汁後の繊維残渣はアルカリ前処理(5%水酸化ナトリウム、150°C、3時間処理)および市販セルラーゼ酵素(18.5ユニット/g乾燥繊維残渣)により91%の高い糖化効率を得ることができる3)。
- パーム廃棄木の搾汁後の繊維残渣100gから25gのエタノールを生産することが可能である(表1)。これは樹液以外の繊維残渣が有する利用可能な発酵糖の約82%がエタノールへ変換できることを示しており、樹液と共に搾汁後の繊維残渣も極めて有望な資源となる3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 柔組織はデンプンを含むため、セルラーゼ以外にデンプン分解酵素の併用が効果的である。
- 五炭糖発酵性酵母を用いることで、キシラン分解由来のキシロースなどの五炭糖も利用できるためバイオエタノール生産量を向上させることができる。
- 繊維残渣の前処理はアルカリ前処理以外、水熱前処理でも高い糖化効率を示す。
- 樹液の有用性が示されていることに加えて、最近では、その搾汁残渣の利用も注目されてきている。本提案のようにエタノール生産の原料、又は吸水性素材4)、燃料用ペレット(特許出願中)にも利用可能であるが、コスト等を検討し総合的な利用方法を考慮する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2013/2013_C06.html
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カテゴリ |
乾燥
コスト
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