超低温保存した子ブタの精巣から次世代の作出に成功

タイトル 超低温保存した子ブタの精巣から次世代の作出に成功
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2010~2013
研究担当者 金子浩之
菊地和弘
中井美智子
発行年度 2013
要約 子ブタの精巣組織を液体窒素内に長期保存した後に、免疫不全マウスに移植し発育させ、精子を作り出すことに成功した。さらに、取り出した精子を顕微授精させた受精卵から正常な子ブタを誕生させることに世界で初めて成功した。
キーワード 超低温保存、幼若精巣、精祖細胞、異種間移植、精子形成、顕微授精
背景・ねらい これまで家畜の生産には、成体から採取した成熟精子を人工授精等で利用してきた。しかし最近、この従来法では対応できないケースが見られる。たとえば、医療研究に用いられる疾患モデルブタは、対象となる疾患によっては幼若な時期で死亡し成体に達しないため次世代を生産できない。一方、最も未成熟な生殖細胞である精祖細胞は、成体ばかりでなく幼若な動物の精巣にも存在している。精祖細胞を長期保存し精子にまで成熟させることができれば、幼若な動物からも遺伝情報を保存し、さらに精子を用いた次世代の生産が可能になる。そこで、本研究では、ブタをモデルとして、幼若な動物の精巣(精祖細胞)を長期保存し次世代を得るシステムの開発を試みた。
成果の内容・特徴
  1. この研究では、幼若ブタから採取した精巣組織の超低温保存と免疫不全マウス(ヌードマウス)への異種間移植、マウスから回収したブタ精子を用いた顕微受精卵の作製、受精卵の雌ブタへの移植を組み合わせた(図1)。
  2. 精巣組織は、組織へのダメージを減らすために超急速に冷却(ガラス化冷却)した後に、液体窒素内(-196℃)で保存した。
  3. 140日間以上超低温保存し加温した後でも精巣組織には大きなダメージはなく、精祖細胞の存在が確認された。精巣組織をヌードマウスの皮下に移植したところ発育し、移植後180日以上経過すると精祖細胞は精子へと成熟した(図2)。
  4. 移植後200日以上経った精巣組織から、多数のブタ精子が回収された(図3)。
  5. 回収した精子を体外成熟卵に顕微授精させ、雌ブタの卵管に移植した。その結果、8頭の雌ブタのうち2頭が妊娠し、合計7頭(雌4頭、雄3頭)の子ブタが生まれた(図4)。
  6. 本成果の特徴は、本来精子を作れない幼若動物の精巣組織を長期間超低温保存し、必要な時に次世代が得られる新しい繁殖システムを開発したことにある。
成果の活用面・留意点
  1. 新システムによって生まれた子ブタは健康に発育し、交配によって次世代が生産できることを確認した。
  2. このシステムは、ブタばかりでなく他の動物種にも応用できる可能がある。
  3. 疾患モデルブタの後代作出への応用が期待される。
  4. 幼若期精巣の超低温保存は、急死した幼若ブタからの遺伝情報の保存を可能とするため、成体からの精液採取に加えて、希少なブタ遺伝資源の保存法のオプションとして期待される。
図表1 236368-1.jpg
図表2 236368-2.jpg
図表3 236368-3.jpg
図表4 236368-4.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02512.html
カテゴリ 遺伝資源 繁殖性改善

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