ケブカアカチャコガネの交信かく乱法による防除法の開発

タイトル ケブカアカチャコガネの交信かく乱法による防除法の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2013
研究担当者 新垣則雄
永山敦士
小禄博昭
安居拓恵
辻井直
田中誠二
若村定男
発行年度 2013
要約 サトウキビの害虫であるケブカアカチャコガネの生態解明を行い、性フェロモンが2-ブタノールであることを明らかにした。これを用いた交信かく乱法による防除法の有効性を室内および野外で確認した。
キーワード 性フェロモン、2-ブタノール、風洞実験、交信かく乱、防除法
背景・ねらい 近年、沖縄県宮古島ではサトウキビが立枯れし、収穫が皆無となる被害が多発している(図1)。その原因はコガネムシの一種「ケブカアカチャコガネ」の幼虫による地下茎や根の食害であった。ケブカアカチャコガネの幼虫は地中に生息するため殺虫剤の効果が及び難く、また島では地下水を飲料水に用いており、地下水汚染につながる多量の殺虫剤施用ができないことから、ケブカアカチャコガネ幼虫の防除は困難だった。一方、ケブカアカチャコガネの成虫は2月の比較的暖かい夕方にのみ地上に現れる。日没後約30分間に一斉に出現し、オスと「性フェロモンを放出するメス」が交尾する。生活史と行動特性の解析から、ケブカアカチャコガネの防除には、オスがメスを見つけられなくすることにより交尾を阻害し、次世代虫の発生を抑制する「交信かく乱法」が最も環境にやさしく現実的な方法であると考え、性フェロモンの解明と本防除法の開発に着手した。
成果の内容・特徴
  1. ケブカアカチャコガネは幼虫で休眠するが、羽化した成虫が性成熟までの間に2回目の休眠に入ることを明らかにした。生殖休眠中の成虫は交尾行動を示さず、性フェロモンも出さなかった。人為的に休眠を終了させた成熟メスから性フェロモンを抽出した。
  2. 誘引活性が確認された性フェロモンは2-ブタノールであった。分子量が小さく揮発性の高いアルコールの一種であり、昆虫のフェロモンとしては初めての発見であった。
  3. 2-ブタノールには2種類の異性体[(S)-2-ブタノールと(R)-2-ブタノール(R2B)]がある。オスを誘引するのはR2Bであるが、非常に高価で、大面積に匂いを放出させる必要がある交信かく乱に使用するには経済面の問題があった。そこで、格段に安価な(R)-と(S)-2-ブタノールを1対1で含む混合物を利用できるか検討した。
  4. 実験室内で性フェロモン誘引源(メスモデル)に対するオス成虫の行動を観察し、交信かく乱の有効性を推測した。R2Bだけでなく、濃度を高くすれば1対1混合物によってもオスがメスモデルに到達できなくなることが確認された。
  5. 信越化学工業(株)の協力のもと、2-ブタノールを封入したディスペンサーと呼ばれる交信かく乱剤をサトウキビ畑に設置した。無処理区と交信かく乱剤処理区を設け、性フェロモントラップ(図2)に捕獲されたオス成虫数を比較した。R2B処理区ではオスはほとんど捕獲されず、また1対1混合物(rac-2B)処理区でも高濃度にするとオスはほとんど捕獲されなくなった(図3)。またメスの交尾率を調べたところ、無処理区ではほぼ100%だったのに対し、R2B処理区では30%、濃度を高めた1対1混合物(rac-2B)処理区では5%であり、濃度を高めれば1対1混合物でも効果があると判明した。
  6. 野外での結果は室内実験で得ていた結果と同等であった。室内実験によって野外での交信かく乱効果が推測できることがわかった。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、これまで開発が遅れていたコガネムシ類害虫へのフェロモン利用の発展に寄与すると期待される。害虫の生態解明に力を入れたことが最大の成功要因と考えられ、コガネムシ類へのフェロモン剤適用には対象種の詳細な生活史解明が重要であることがわかった。
図表1 236369-1.jpg
図表2 236369-2.jpg
図表3 236369-3.jpg
図表4 236369-4.jpg
図表5 236369-5.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02513.html
カテゴリ 病害虫 害虫 さとうきび 性フェロモン フェロモン 防除

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