形状や大きさが多様なカキ果実を溶液処理のみで剥皮する方法

タイトル 形状や大きさが多様なカキ果実を溶液処理のみで剥皮する方法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2009~2013
研究担当者 野口真己
尾﨑嘉彦
東順一
発行年度 2013
要約 カキ果実の酵素剥皮において、食品用乳化剤処理後、弱アルカリ水等で加熱処理を行うと、刃物で傷付けすることなく、カキ果皮表面に亀裂が生じ、酵素液が効果的に滲入できる。その後、酵素反応が進むことで、種々のカキ果実を効率よく剥皮できる。
キーワード カキ、酵素剥皮、食品用乳化剤、クチクラ
背景・ねらい カキ果実の酵素剥皮法は、カキ果実加工過程での剥皮作業の省力化や剥皮果実の品質(剥皮面が滑らかで外観がよい等)の点で優れている。従来の方法では、細胞壁分解酵素による処理の前に、金属針や刃物を用いて果実表面に物理的な穿孔処理を行い、酵素液がカキの果皮組織に容易に滲入できるようにする必要がある。しかし、果皮表面を均一に穿孔する処理は煩雑であることから、省力化が求められている。
そこで、物理的な穿孔処理を行わず、溶液処理だけで簡易に酵素液をカキ果皮組織に滲入させることによって、カキ果実の剥皮を効率よく行う方法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 酵素処理の前処理として、従来行われていた物理的な穿孔処理を、食品用乳化剤処理(0.01-1%のポリグリセリン脂肪酸エステル水溶液を使用)と弱アルカリ水(0.1-5.0%の重曹水を使用)を用いた加熱処理を併用した処理で代用できる(図1)。この改良剥皮法では、手作業による穿孔処理(1果当たり約1分)を行わず、溶液に浸漬する処理だけで剥皮できるため作業性に優れる。
  2. 酵素液の滲入に関与する加熱処理後の亀裂の生じやすさには、品種間差や同一果実内での部位間差があり、同一果実内では果柄側のヘタ周りの果皮で最も亀裂を生じにくい。「市田柿」は亀裂を生じやすく、食品用乳化剤処理のみでも十分な亀裂が得られる(図2)。一方、「富有」は亀裂を生じにくい。
  3. 品種毎の果皮の亀裂の生じやすさに応じて、食品用乳化剤処理、弱アルカリ水を用いた加熱処理等を組み合わせることによって(表1)、形状や大きさが多様なカキ果実を表面が平滑な丸ごとの形状の剥皮果実に加工することができる(図3)。
  4. 亀裂を生じにくい品種「富有」に対しては、食品用乳化剤の原液を塗布した後、弱アルカリ沸騰水で加熱処理すると、ヘタ側の果皮まで亀裂を生じさせることができ、酵素剥皮が可能となる。しかしながら、原液塗布は水溶液への浸漬処理と比較すると作業性で劣る。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:干柿加工業者やカットフルーツ加工業者でのカキの剥皮工程への導入。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:カキの主産地である和歌山県の他に、全国の干柿等のカキ産地(干柿仕向量は約20,000トン)への普及が期待される。2017年ごろまでに、特許の実施許諾等を数件見込む。
  3. その他:使用する酵素剤および食品用乳化剤は、いずれも食品添加物である。なお、酵素剥皮に用いる酵素剤にはペクチナーゼ活性が含まれることが必須であり、セルラーゼ活性が混在する場合、その活性は弱いものが望ましい。また、「市田柿」のように亀裂が生じやすい品種においても、酵素剥皮を阻害するカキに内在するペクチナーゼ活性阻害因子を失活させるために、加熱処理は必須である。
図表1 236474-1.jpg
図表2 236474-2.jpg
図表3 236474-3.jpg
図表4 236474-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2013/13_062.html
カテゴリ かき 加工 省力化 品種

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