カンピロバクターの細胞表面糖脂質の糖鎖欠損により鶏腸管内定着性が低下する

タイトル カンピロバクターの細胞表面糖脂質の糖鎖欠損により鶏腸管内定着性が低下する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2008~2013
研究担当者 岩田剛敏
知久和寛
天野憲一
楠本正博
亀山眞由美
小野裕嗣
秋庭正人
発行年度 2013
要約 カンピロバクターの細胞表面糖脂質であるリポオリゴサッカライド(LOS)の糖鎖長が胆汁酸への抵抗性と関連している。LOS糖鎖が一定以上欠損するとカンピロバクターの胆汁酸抵抗性は大きく減弱し、鶏腸管内での生残性および定着性が低下する。
キーワード カンピロバクター、リポオリゴサッカライド、胆汁酸、鶏
背景・ねらい 鶏腸管に常在するCampylobacter jejuni は、カンピロバクター食中毒の主要な原因菌である。胆汁酸は、界面活性作用により細胞表面を傷害し殺菌性を示すため、C. jejuni が鶏腸管に定着するには胆汁酸に対する抵抗性が鍵となる。本菌の細胞表面はリポオリゴサッカライド(LOS)と呼ばれる糖脂質により覆われており、LOSは本菌の様々な生理活性に関与することが知られているが、胆汁酸抵抗性や鶏腸管定着性との関連については明らかとなっていない。
本研究では、LOSの生合成に関与する酵素等の遺伝子を破壊することで様々な糖鎖長のLOS変異株を作出する。変異株と親株の比較により、LOSの糖鎖構造の変化が鶏腸管内でのC. jejuni の生残と定着に及ぼす影響について解析し、本菌の制御技術開発のための基礎的知見を得ることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. C. jejuni NCTC 11168 株および81-176株を親株として、様々なLOS糖鎖長の変異株を作出した(図1)。胆汁酸(デオキシコール酸)に対する抵抗性を親株と変異株の間で比較すると、C. jejuni の胆汁酸抵抗性はLOS糖鎖長と関連することが確認できる。特にLOS糖鎖が一定以上欠損した株(hldEhldDwaaC破壊株)では、胆汁酸抵抗性が著しく減弱する(図1)。
  2. 鶏腸管内における生残性を評価するため、胆汁酸を含む鶏空腸内容物抽出液を作製して抽出液中での生残性を調べると、LOS糖鎖が一定以上欠損した株では鶏空腸内容物抽出液に接種後6時間で検出限界以下となる(図2)。
  3. 国内の鶏から分離されたC. jejuni 11-164 株のhldD破壊株およびその遺伝子相補株を作出し、SPF鶏ヒナにおける腸管内定着性を親株との間で比較すると、hldD破壊株は鶏腸管内定着性が有意に低下する(図3)。
  4. LOS糖鎖欠損による胆汁酸抵抗性の低下は、菌体表面の疎水性が上昇することで生じると推察される。
成果の活用面・留意点
  1. これまで、グラム陰性菌の細胞表面糖脂質(LPS/LOS)は動物腸管内定着に関わることが示唆されていたが、糖鎖のどのような構造変化が腸管内定着に影響するのか不明であった。本研究により、C. jejuni のLOS内部コア領域の2-ケトデオキシオクトン酸(Kdo)へのヘプトース(L,D-Hep)付加が、本菌の胆汁酸抵抗性および鶏腸管内定着性に重要であることが示唆された(図1)。
  2. カンピロバクターの糖鎖生合成酵素阻害剤は、本菌の鶏腸管内の定着阻止技術の開発につながる。
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図表2 236585-2.jpg
図表3 236585-3.jpg
図表4 236585-4.jpg
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図表6 236585-6.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2013/niah13_s21.html
カテゴリ 抵抗性

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