タイトル |
大規模稲作経営による高収益米直売ビジネスモデル |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
澁谷美紀
細山隆夫
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発行年度 |
2013 |
要約 |
大規模稲作経営の米直売では高価格購入する消費者と大量購入する事業者を顧客とし、特徴ある商品を核に、消費者にはプレミアム価格、事業者には手頃な価格の設定で大量販売と高収益を実現できる。このため消費者向けに商品価値を高める活動が重要である。
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キーワード |
大規模稲作経営、米直売、ビジネスモデル、高収益、大量販売
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背景・ねらい |
米価低迷のなか、大規模稲作経営では中食・外食業者(以下、事業者)と消費者への商品差別化による米直接販売(以下、米直売)が重要な所得向上策となっている。しかし、事業者の価格交渉力が強く、直売が所得向上に結びついていない経営もある。そこで、良食味米地域・北海道上川中央で主食用米を全量直売する協業法人A社(経営面積153ha、うち水田96ha、うち水稲作62ha、農業生産法人(従業員13人)と販売会社(同14人)から構成)を対象に、商品差別化のための活動と顧客層別、品種別の価格を検討し、大規模・高収益の米直売ビジネスモデルを提示する。
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成果の内容・特徴 |
- このモデルでは、経営内の有形・無形資源を活かし、特徴ある商品を中心に、消費者、事業者の各顧客層のニーズに合う商品差別化の活動と、プレミアム価格を含む価格設定を行う。少量でも選好度の強い商品中心に高価格で購入する消費者と、やや手頃な価格で大量購入する事業者の複数顧客層の確保で、大量販売と高収益を実現できる(図1)。
- 生産・直売過程では特徴ある商品を差別化する基礎的な活動を軸に、各顧客層のニーズに合わせて商品の価値を高め一層の差別化を図る活動が別途付加されている(表1)。基礎的な活動では、良食味で全国の生産量が少ない希少「品種X」とその採種技術や販売パートナーである百貨店の販売網といった資源を活かし、自社採種や対面販売・商談等の活動で差別化が行われている。顧客層毎の活動では、販売経験によるニーズ把握に基づき、多頻度小ロット配送など事業者より消費者向けに多くの活動が行われている。
- 商品価格の設定では全体として概ね高めであるが、販売量と選好に応じて顧客層別に異なる価格が設定されている(表2)。全体として、消費者への販売量は事業者より少ないものの価格は高い。ただ、「品種X」は事業者より消費者への販売量が多く、プレミアム価格にしている。他方、事業者には、「品種X」と他品種をブレンドすることで、相対的に高めながら消費者販売よりも安価に抑え、大量販売している。
- 消費者は大量販売が難しいものの収益性の高い販売先、事業者は収益性で劣るが大量販売できる販売先である(表3)。特に、百貨店催事販売の継続等で高価格購入する消費者を確保し続け、この顧客層を対象に商品価値を高める活動を重点化しプレミアム価格で販売することが、収益性が極めて高い利益の源泉となる。一方で、事業者への大量販売によって精米施設等の機械施設の稼働率向上や販売担当の人材確保が可能になる。
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成果の活用面・留意点 |
- 大規模稲作経営の商品差別化による米直売ビジネスモデルを分析する上で適用できる。
- 大消費地から離れた良食味米地域の対象経営に基づくビジネスモデルであり、準良食味米地域での米直売には別のモデルの構築が必要になる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2013/harc13_s04.html
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カテゴリ |
経営管理
水田
品種
良食味
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