バイオディーゼル燃料製造副産物を原料とした酵母による油脂生産

タイトル バイオディーゼル燃料製造副産物を原料とした酵母による油脂生産
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2011~2013
研究担当者 高桑直也
発行年度 2013
要約 ヤマブドウから分離した酵母Pseudozyma parantarctica TYC-2187株は、グリセリンから油脂への変換能が高く、油脂を菌体内に高濃度に蓄積する。蓄積した油脂の構成脂肪酸はバイオディーゼル燃料品質規格に適合すると示唆される。
キーワード バイオディーゼル、油脂、トリグリセリド、酵母、グリセリン
背景・ねらい 油糧植物から抽出した油脂(トリグリセリド, TG)は、食用油として使用した後、廃食用油の構成脂肪酸をメチルエステル化することでバイオディーゼル燃料として活用できるが、製造工程でグリセリン(Gly)が副生し、その有効利用法の開発が求められている。一方、油糧植物に代わる資源としてRhodosporidium 属などの油糧酵母の利用が注目されており、一部の酵母の菌種は培地中のグリセリン(Gly)を資化して、生成したTGを菌体内に蓄積する。従って、これらの酵母を用いてバイオディーゼル燃料製造工程で副生するGlyをTGに変換することで、効率的バイオディーゼル燃料製造工程の構築が可能と期待される。そこで、副生GlyからTGへの変換能が高い酵母を自然界から探索する。
成果の内容・特徴
  1. Pseudozyma parantarcticaはヤマブドウ果皮に多く検出され、同果皮から分離されたTYC-2187株は、バイオディーゼル燃料製造工程で副生したGly(カリウム濃度2.48 wt%)を含む培地において多量のTG(11.9 g/L培地)を生産し、その量は当該菌種の標準株(CBS 10005T)および同属菌種(P. antarcticaおよびP. tsukubaensis)より多い(図1)。
  2. TYC-2187株は、副生Gly(80 g/L)および酵母エキス(10 g/L)を含む培地(初発pH6.0)中で、25°C、200 rpmで48時間培養することにより、乾燥菌体重量当たり55.2%までTGを菌体内に蓄積する。培養1日当たりのTGの生産性は7.9 g/L で、代表的な油糧酵母Rhodosporidium toruloidesよりも生産性が高い(表1)。
  3. TYC-2187株のTGの脂肪酸組成は、ミリスチン酸(0.8%)、パルミチン酸(20.7%)、パルミトレイン酸(1.6%)、ステアリン酸(7.5%)、オレイン酸(36.2%)、リノール酸(30.7%)およびリノレン酸(2.3%)から構成される(図2)。
  4. TYC-2187株のTGの脂肪酸組成から算出されるヨウ素価は92で、セタン価は54である。TYC-2187株のTGの構成脂肪酸は、廃食用油を原料とした場合と同様に、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」で定めるJISの3項目の規格(リノレン酸含量(≦12%)、ヨウ素価(熱的・化学的安定性指標、≦120)、セタン価(着火性指標、≧51))すべてに適合すると示唆される(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. P. parantarcticaは、製パン・醸造用酵母Saccharomyces cerevisiaeと同様にバイオセーフティーレベル1に該当する。TYC-2187は北海道農業研究センターで保有しており、所内規定に基づく手続きを経て分譲可能である。
  2. TYC-2187株は、グリセリンを含むバイオエタノール蒸留廃液でも培養でき、TGの蓄積が可能である。また、セルロース系バイオマスの糖化液に含まれるグルコースおよびキシロースの他、スクロースおよびラクトースの資化性を有することから、テンサイ糖蜜やチーズホエーも増殖炭素源として利用できる。
図表1 236659-1.jpg
図表2 236659-2.jpg
図表3 236659-3.jpg
図表4 236659-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2013/harc13_s14.html
カテゴリ 乾燥 てんさい ぶどう

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