タイトル |
定植前のネギ苗へのリン酸カリ溶液施用はネギの増収とリン酸減肥を可能にする |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2009~2013 |
研究担当者 |
村山徹
宮沢佳恵
根本知明
佐藤睦人
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発行年度 |
2013 |
要約 |
ネギ苗をリン酸濃度1.15%に調製したリン酸カリ溶液に定植前に浸漬することによって、初期生育が顕著に促進され、収量が有意に増加する。それによって、圃場へのリン酸施用量を50%以上削減しても、慣行と同等以上の収量を確保できる。
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キーワード |
ネギ、定植前リン酸苗施用、リン酸減肥、リン酸カリ
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背景・ねらい |
国際的な肥料の需要増などにより肥料原料の価格は不安定化しており、それに対応した減肥栽培技術の実用化が喫緊の課題となっている。その中でもリンはその傾向が顕著で、原料であるリン鉱石は将来的には枯渇する懸念がある。 露地野菜栽培に対応した具体的なリン酸施肥低減技術の1つとして、定植前リン酸苗施用が挙げられる。ネギはこの技術の効果が現れやすい品目であり、技術の適用条件を検討することによって、実用化を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 定植前リン酸苗施用とは、苗をリン酸濃度1.15%のリン酸カリ溶液に浸漬してから定植する技術である。ネギにこの技術を適用した場合、初期生育が顕著に促進される。収穫時までこの傾向が続き、圃場へのリン酸施用量を50%以上削減しても、定植前リン酸苗施用を行えば、慣行と同等以上の収量が確保できる(図1)。
- 定植前リン酸苗施用は小規模な場合にはリン酸カリ溶液をコンテナに入れ、大規模で効率的に行う場合にはエブ&フロー装置などを用いる。浸漬時間は用土が湿る10分程度で十分で、チェーンポット苗の場合、育苗箱当たりの吸収量は最大で3Lである。これは圃場へのリン酸施用量2.45g/m2に相当する。
- これまでの栽培試験結果は表1に示すとおりで、実施した土壌タイプ、有効態リン酸濃度の範囲では、ほとんどの場合に増収効果が得られる。作型では、秋どりで効果のみられない事例があり、定植が低温期にあたる作型の方が安定した効果が期待できる。
- 定植前リン酸苗施用を行うために別途必要になるのは、定植前リン酸苗施用のための肥料で、サンピプラスの場合7kg/10aである。また、苗施用のリン酸カリ溶液を調製して苗を浸漬する労力として、1.5~3時間/10aほど労働時間が増加する。一方、収量増によって収入が120,000~180,000円/10a増加し、圃場へのリン酸肥料を50%削減すれば、肥料費が6,000円/10a節減される。これらにより、労働時間増、資材費などを十分補填できる(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:ネギ生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北、北陸地方・150ha
- その他:市販のリン酸カリ肥料の中でネギに対する安定した増収効果が確認されたのは、サンピプラスと大塚ハウス9号(いずれも大塚アグリテクノで、各々現物25g/L、22.5g/L)である。また、潅注でも一定の効果はあるが、ばらつきが大きくなるため浸漬の方が安定している。
- 「行政対応マニュアル」を作成中であり、HPにアップロードされる予定。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2013/13_046.html
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カテゴリ |
肥料
育苗
栽培技術
施肥
ねぎ
野菜栽培
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