モリブデン化合物とべんがらを用いた水稲湛水直播のための種子被覆法

タイトル モリブデン化合物とべんがらを用いた水稲湛水直播のための種子被覆法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2009~2013
研究担当者 原嘉隆
発行年度 2013
要約 水稲湛水直播での硫酸塩に起因する苗立ち阻害はモリブデン化合物を種子に被覆すると軽減できる。耐水性ポリビニルアルコールを用いてべんがらを被覆した種子は流亡しにくくなる。両者を合わせた種子被覆は安価で簡易な苗立ち向上技術として利用できる。
キーワード 水稲湛水直播、苗立ち、モリブデン、べんがら、ポリビニルアルコール
背景・ねらい 水稲作において直播は省力で安価な手段と期待されるが、湛水直播では苗立ち確保のために過酸化カルシウム剤の被覆が必要とされ、この被覆に労力と費用がかかる。また、より手間がかからない還元鉄被覆(鉄コーティング)も普及しているが、被覆時の発熱による種子への障害を回避する作業が手間であることや、土壌中に種子が埋没すると苗立ちが低下しやすいなどの課題もある。近年、種子近傍での硫化物の生成が苗立ち低下の一因であり、モリブデン酸塩によって硫化物の生成が抑制できることがわかった。そこで、モリブデン化合物と発熱しない酸化鉄を組み合わせた被覆法を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 11kgN/10a相当の硫安を添加して湛水とした土壌中に水稲種子を播種すると苗立ち(生存)しないが、ポリビニルアルコール(PVA)を用いて微溶性のモリブデン化合物を種子に被覆して播種すると、苗立ち割合が向上する(図1)。安価な三酸化モリブデンでも十分な効果が得られる。
  2. 乾籾の0.1倍重のべんがら(酸化鉄の粉)に、べんがらに対する重量比が1%である耐水性PVA(ケン化度が97%程度のPVA)の粉を混ぜる。この混合粉を種子に湿らせながら粉衣すると、耐水性PVAが接着剤としてはたらき、種子の表面にべんがらの被覆層ができる。被覆層は乾けば耐水性になる。資材量は少ないので、被覆は簡易である。この被覆種子は、水に馴染んで沈みやすいため、播種時に種子が流亡しにくく、扱いやすい。
  3. 3~6kgN/10a相当の硫安を添加した土壌中に、べんがらと三酸化モリブデンと耐水性PVAを混合して被覆した種子を播種する場合、苗立ち割合が十分向上するために必要な三酸化モリブデンの量は乾籾1kgあたり0.03molMo程度である(図2)。
  4. 乾籾に対して、0.1倍重のべんがら、0.005倍重(0.035molMo/kg)の三酸化モリブデン、0.001倍重の耐水性PVAを混合し、水稲種子に被覆する「べんがらモリブデン被覆」は、1~10mmol/kgの硫酸塩(硫安で3~30 kgN/10a相当)を含む土壌において、苗立ち向上効果を有する(図3)。被覆に必要な資材費は、乾籾1kgあたり70円程度である。
  5. 硫安を施用した水田において、溝切り点播で浅く土中に播種した場合、べんがらモリブデン被覆は、過酸化カルシウム剤被覆にも劣らない苗立ちが得られる(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本法は、水稲湛水直播を安価で簡易に行う技術として活用できる。
  2. 本法は、還元鉄被覆と比較して、資材の被覆量が少なく、被覆層も柔らかいので、鳥害を受けやすい。このため、土壌表面ではなく土壌中に播種するのが望ましい。
  3. 本成果におけるモリブデン化合物の苗立ち向上効果は、硫化物の生成を抑制することによるため、硫化物の基である硫酸根が少ない土壌では顕在化しにくい。
図表1 236707-1.jpg
図表2 236707-2.jpg
図表3 236707-3.jpg
図表4 236707-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2013/karc13_s01.html
カテゴリ 水田 水稲 鳥害 播種

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