ITSプライマーを用いたPCR法により土壌繊毛虫を簡便・高感度に検出できる

タイトル ITSプライマーを用いたPCR法により土壌繊毛虫を簡便・高感度に検出できる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2011~2012
研究担当者 嶋谷智佳子
発行年度 2013
要約 土壌の環境DNAを鋳型として、繊毛虫のInternal Transcribed Spacer (ITS)領域を標的としたプライマーを用いたPCR法は、土壌中の繊毛虫を簡便・高感度に検出することができ、検鏡法よりも優れている。
キーワード 土壌繊毛虫、ITS領域、PCR、プライマー、環境DNA
背景・ねらい 土壌繊毛虫は、細胞表面に繊毛を持った単細胞真核生物のグループであり、細菌等の摂食者として土壌生態系内の物質循環に関与していることから、生物指標としての利用が期待できる。土壌繊毛虫の検出は、主に顕微鏡下で形態によって行われているが、近縁種間で形態が極めて似ている場合が多く、属の区別さえ難しいことがある。しかも、顕微鏡下での繊毛虫の検出は、時間もかかり、作業も熟練を要する。そこで、土壌の環境DNA を鋳型とし、ITS領域を標的としたプライマーを用いたPCR法を行い、繊毛虫の簡便な検出手順を確立する。
成果の内容・特徴
  1. 畑地圃場(土壌A、B)から、それぞれ100個体の繊毛虫を分離し、顕微鏡下での形態観察および18S rDNAにより種を同定した。その中から土壌A由来のDiaxonella trimarginataHolosticha manca、土壌B由来のOxytricha lanceolataを無作為に選抜し、ITS領域塩基配列の種特異的な部分からプライマーを設計した(表1)。
  2. 設計したプライマーを用いてPCRを行うと、D. trimarginataでは467 bp、H. mancaでは448 bp、O. lanceolataでは452 bpのPCR産物が増幅される(図1)。
  3. 土壌AとBからISOIL for Beads Beating Kit (Nippon gene, Tokyo, Japan)を用いて環境DNA を抽出し、土壌Aから単離されたD. trimarginataH. mancaに特異的なITSプライマーを用いてPCRを行うと、土壌Aの環境DNAを鋳型とした場合、PCR産物が増幅され、土壌Bの環境DNAを鋳型にした場合は、増幅されない(図2)。土壌Bから無作為に100個体の繊毛虫を顕微鏡下で単離・同定したときには、D. trimarginataH. mancaは検出されなかった。
  4. 土壌Bから単離されたO. lanceolataに特異的なITSプライマーを用いてPCRを行うと、土壌AとBどちらの環境DNAを鋳型とした場合でもPCR産物が増幅される(図2)。PCR産物はO. lanceolataの配列であることをシーケンスにより確認した。O. lanceolataは、土壌Aから無作為に100個体の繊毛虫を顕微鏡下で単離・同定したときには検出されなかったが、本検出法であれば検出される。従って、本検出法は検鏡法よりも検出感度が高く、優れている。
成果の活用面・留意点
  1. 繊毛虫を生物指標として利用していくためには、多種多様な土壌を用いてデータを蓄積し、ある環境で特異的に存在する繊毛虫を特定していく必要がある。
  2. 本検出法は、土壌環境の指標となる繊毛虫が特定された場合に、土壌診断を行う上での利用が期待できる。
図表1 236717-1.jpg
図表2 236717-2.jpg
図表3 236717-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2013/karc13_s11.html
カテゴリ 土壌環境 土壌診断

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