タイトル |
2005-2012年に日本に飛来したトビイロウンカとセジロウンカの薬剤抵抗性の変動 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2005~2013 |
研究担当者 |
松村正哉
真田幸代
大塚彰
竹内博昭
佐藤雅
|
発行年度 |
2013 |
要約 |
2005-2012年に日本に飛来したイネウンカ類の半数致死薬量 (LD50値) から見た薬剤抵抗性のレベルは、トビイロウンカではイミダクロプリドで年々上昇して8年間で136倍となり、セジロウンカではフィプロニルで2009年をピークに約30倍変動している。
|
キーワード |
薬剤抵抗性、微量局所施用法、ネオニコチノイド、イミダクロプリド、フィプロニル
|
背景・ねらい |
2005年以降、東アジア地域ではトビイロウンカとセジロウンカが多発傾向にあり、その大きな要因として薬剤抵抗性の発達が指摘されている。現在、日本における両種の防除はイミダクロプリドとフィプロニル2薬剤の育苗箱施用が中心となっている。これらの剤を含め、主要な薬剤に対する感受性の変化を明らかにすることは、イネウンカ類の防除対策を立てる上で重要な情報となる。そこで、2005-2012年に日本に飛来したトビイロウンカとセジロウンカの主要な10薬剤に対する半数致死薬量(LD50値:50%の虫が死亡する薬量)を微量局所施用法によって調査する。
|
成果の内容・特徴 |
- 2005-2012年の8年間にLD50値が大きく変動した薬剤は、トビイロウンカではイミダクロプリドとチアメトキサムであり、LD50値の8年間の変化率(最大値/最小値)は前者で136倍、後者で21倍である。セジロウンカではフィプロニルで大きく変動し、LD50値は2009年をピーク(77.2μg/g)に約30倍変動している(図1)。2009年以降はフィプロニルのLD50値は低下したものの(図1)、プロビット回帰直線の傾きの値が小さく(データ省略)、抵抗性が回復したとはいえない。
- トビイロウンカのネオニコチノイド系3剤に対するLD50値は薬剤ごとに大きく異なり、イミダクロプリドでは極めて高く、チアメトキサムについても2011年以降5μg/gを越えた。ジノテフランについては1μg/g以下の低い値で推移しており、8年間の変化率も10倍以下である(図1)。
- トビイロウンカのフィプロニル、セジロウンカのネオニコチノイド系3剤に対するLD50値は1μg/g以下の低い値で推移し、抵抗性の発達は見られない(図1)。
- エトフェンプロックスのLD50値は両種ともに4μg /g以下の値で推移し、大きな変動は見られない(図1)。有機リン系とカーバメート系の5剤については両種ともに2005年当初からLD50値が高いものの、トビイロウンカのマラソン以外については大きな変動は見られない(図1)。
- ベースライン値(殺虫剤が開発された直後に調査されたLD50値)を基準とした抵抗性倍率が高かった薬剤は、トビイロウンカのイミダクロプリドで2012年の616倍、マラソンで2009年の215倍である(図2)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 本情報はイネウンカ類の防除対策を考える上での重要な情報となる。
- イミダクロプリドまたはフィプロニルを単一成分として含む箱施用薬剤は、前者はトビイロウンカに、後者はセジロウンカに対する効果が低下している。箱施用薬剤の選定においては、重点的に防除する種に対して効果の低いものを選ばないように注意する。
- トビイロウンカのジノテフランとフィプロニルについては、LD50値は低いものの8年間でやや増加傾向にあるので、今後の動向に注意を要する。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2013/karc13_s20.html
|
カテゴリ |
病害虫
育苗
抵抗性
防除
薬剤
|