里山管理を始めよう

タイトル 里山管理を始めよう
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大住 克博
奥 敬一
黒田 慶子
発行年度 2014
要約 小面積皆伐と薪による資源利用を組み合わせることで、高齢化が進んで様々な問題を抱えるようになった里山林を若返らせ、地域社会での生活に新たな価値を付け加える実践的な里山林管理手法を提案しました。
背景・ねらい 高度成長期以降、利用が停止したことで高齢化が進んだ里山広葉樹二次林では、ナラ枯れの拡大、生物多様性の劣化、次世代の樹木が育たない、といった様々な問題が生じています。これらの問題を解決するためには、間伐ではなく小面積の皆伐を導入することによって、若い林がモザイク状に混じる里山林へと誘導していく必要があります。5年間にわたり地域社会と研究者との協働で実践してきた社会実験の成果をもとに、小面積皆伐と薪による資源利用を組み合わせて、里山林の若返りとともに地域社会での生活に新たな価値を付け加える里山林管理手法を提案し、その手引きをハンディーな小冊子としてまとめました。
成果の内容・特徴

里山林の若返りが求められている

高度成長期以降、薪や柴などを日常的に利用することがなくなって数十年がたち、里山の広葉樹二次林では高林齢化と大径木化が進みました。その結果、里山林では近年様々な問題が生じています。ナラ枯れの被害は、大径木化したナラ林に拡大しています。生物多様性の視点からは、明るく若い林内を生息場所とする動植物が激減しています。また、里山林の広葉樹の多くは、大径化すると萌芽能力が低下するため、森林としての持続性も低下しています。このような状況にある里山林に対しては、小面積の皆伐を可能なところから実施し、積極的に里山林を若返らせる必要があります。

社会実験の試み

そこで、京都府長岡京市と滋賀県大津市の二カ所で、以下の3点を目標として地域社会との協働による里山管理の社会実験を行いました(図1)。
  1. 小面積皆伐により若い林の混じるモザイク的な里山林を作る
  2. 伐採材を薪ストーブで使う薪として活用し、里山林を資源として利用する動機を生み出す
  3. 市民団体や自治体で実施できる管理指針を示す
小面積皆伐による薪の生産には、市民団体や行政担当者、地域住民自身が参加し、かかるコストや労力を調べました。また、対象地域で薪ストーブのモニター家庭を選定して、里山からの薪の利用による生活や意識の変化を調査しました。これらの参加者は伐採後の里山林の更新状況の調査や管理作業にも携わりました。

管理の流れと薪による資源利用の効果

皆伐から更新までの流れは写真1の通りです。伐採と材の収穫後の確実な更新のために、モニタリング調査を実施し、必要に応じて獣害の防止、更新不良箇所への地域産苗木の補植といった管理作業を行って、持続性を確保しました。
全体の作業にかかった費用を積算し、薪の生産コストに換算すると、薪1束(コナラで約10kg 程度に相当します)あたり550 円前後となりました(図2)。これは概ね市販されている薪の価格と同等です。薪による資源活用で管理費をまかなうことは十分現実的な選択肢と言えるでしょう。
薪ストーブの利用者の視点からは、薪の利用には暖房としての満足感、化石燃料削減効果とともに、生活に豊かさの実感をもたらす効果が認められました(図3)。また、実践の中で、里山林が薪として資源になることが明確に認識されるようになり、地域住民にとって里山林管理参加への有力な動機付けとなりました。

管理手順を手引書にまとめました

以上の成果をもとに、里山林管理のハンディーな手引書を作成しました(図4)。森林総合研究所ウェブサイトからもダウンロードできます。「里山管理を始めよう」で検索してください。

本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト「現代版里山維持システム構築のための実践的研究」(平成21〜 25 年度)による成果です。
図表1 236741-1.jpg
図表2 236741-2.jpg
図表3 236741-3.jpg
図表4 236741-4.jpg
図表5 236741-5.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p8-9.pdf
カテゴリ コスト シカ モニタリング

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