タイトル | スギ大径木の低コストで効率的な製材技術の開発 |
---|---|
担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
伊神 裕司 松村 ゆかり 村田 光司 鈴木 養樹 |
発行年度 | 2014 |
要約 | 今後供給増が見込まれるスギ大径木から得られる製材品を公共建築物などの建築用材として利用するために、スギ大径木から大断面の製材品を効率的に生産する製材システムを開発しました。 |
背景・ねらい | 戦後植林されたスギが順調に成長し、今後、大径木として供給されることが見込まれますが、髙品質なものは少なく、一般的な品質のものが多いと予測されています。そのため、良質な大径木や見た目の良いいわゆる役物(やくもの)と呼ばれる高品質な製材品を生産目標とする製材方式は採用できないと考えられています。そこで、スギ大径木から大断面の製材品を生産して公共建築物など大規模木造建築物の建築用材として利用するため、作業時間の改善による製材作業の効率化を行い、採算のとれる可能性のある製材技術を開発するとともに、含水率とヤング係数(曲がりにくさの指標)に応じた大径木の効率的な選別・製材システムを開発しました。 |
成果の内容・特徴 | スギ大径木製材作業の効率化に向けた検討スギ大径木からは、大断面の心持ち正角や心持ち平角、さらには樹心を含まない心去り平角などを生産することができ、それらを公共建築物など大規模木造建築物の一般建築用材として利用することが期待されます( 図1)。スギ大径木の木取り( 丸太のどの部分からどんな製材品を生産するか判断すること) は複雑になることが多く、現在普及している単純な木取りのための高能率製材機械では切ることができません。そこで、スギ大径木の製材作業を分析して、作業の改善点を明らかにするとともに製材コストを試算して、スギ大径木製材作業の効率化に向けた検討を行いました。スギ大径木の製材作業分析の結果、従来の方法では樹心位置を把握して木取りを決定する作業に長時間を費やしていることや、挽き幅が大きい場合には送り速度を遅くする必要があるために作業能率が低下することがわかりました。また、汎用的な製材機械を組み合わせた製材ラインについて製材コストを試算した結果、心去り平角未乾燥材の製材コストは採算の取れる水準の丸太1 立方メートル当たり3 万円台前半であることがわかりました。 スギ大径木の選別・製材システム大断面の製材品の場合には、建築用材として不可欠な乾燥が難しくなるという課題が生じます。そこで、丸太の段階で含水率を測定し、それを木取りに反映させることによって乾燥コストを低減できると考え、電気容量測定による丸太含水率の推定手法を開発し、丸太の心材含水率が100% より大きいか否かを判定することを可能にしました。次に、スギ大径木の製材試験を行った結果、丸太と製材品の含水率の間、丸太と製材品のヤング係数の間には高い相関があることがわかりました( 図2)。これらに基づき、スギ大径木の効率的な選別・製材システムを設計しました( 図3)。含水率の高い丸太からは比較的乾燥の容易な心去り平角を生産し、含水率が低い丸太からはさらにヤング係数に応じて心持ち正角あるいは心持ち平角を生産します。以上のように、含水率やヤング係数によって丸太を選別し、製材品に要求される強度などの性能や乾燥の難易に応じて適切な木取りを適用することによって、スギ大径木から大断面の製材品を効率的に生産することが可能になります。これらの成果は都道府県の技術者、製材業者及び製材機械メーカに提供しており、今後は、製材作業改善や大径材に適した製材機械の開発を行うことによって、大径材の需要拡大に貢献して行きます。 本研究は、交付金プロジェクト「スギ造林大径木を公共建築等において利用拡大するための技術開発」による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p18-19.pdf |
カテゴリ | 乾燥 コスト 需要拡大 低コスト |