膨大な木材の強度データを1つにまとめて利用可能に

タイトル 膨大な木材の強度データを1つにまとめて利用可能に
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 加藤 英雄
井道 裕史
長尾 博文
小木曽 純子
平松 靖
発行年度 2014
要約 森林総合研究所がこれまでに実施してきたいろいろな種類の木材に関する膨大な数の強度試験の結果をひとつにまとめ、規格改正等に活用できる「木材の強度データベース」を構築しました。
背景・ねらい 木材の強度試験は、古くは節など欠点のない小さな試験体(無欠点小試験体*)で行っていましたが、現在では、木造の柱や梁(はり)に使用される実大サイズの製材品で評価することが多くなっています。森林総合研究所では、目的に応じて、無欠点小試験体、製材品、ラミナ*(集成材を構成する板)の材料ごとに膨大な数の強度試験を行ってきましたが、これらのデータの活用は各々の実験の目的に限定されていました。そこで、木材の強度に及ぼすと考えられる項目(密度や寸法、加工条件等)を整理するとともに、それぞれのデータを統合して、「木材の強度データベース」を構築しました。この成果は、新たな木質材料の強度性能評価や規格改正に活用されています。

*無欠点小試験体
節などの強度低下に影響を及ぼす欠点を取り除いた試験体のこと。
*ラミナ
集成材を構成する厚さ5cm 以下のひき板のこと。
成果の内容・特徴

背景・目的

木材の強度試験は、無欠点小試験体、製材品、または、集成材のラミナといった材料ごとに行われてきており、それぞれの膨大な試験結果を一つにまとめたデータベースの構築が以前から求められていました。しかし、木材の強度は試験体の大きさにより変化する(大きくなると強度が低下するという寸法効果がある)ため、無欠点小試験体のデータをそのまま製材品に活用することはできませんでした。また、強度性能に及ぼす木取りや製造条件等を整理して、データベースに加える必要がありました。こうした点を踏まえて、無欠点小試験体、製材品、ラミナに応じた強度データベースを構築するとともに、これらを統合するシステムを検討しました。

研究成果

無欠点小試験体の強度は、木材の強度を知る上で最も基本的なデータで、過去に蓄積されたデータをどのようにデータベース化するかが課題でした。また、原材料は丸太なのか製材品なのか、どの位置から採取したかなど、材料の履歴を関連付ける必要がありました。こうした項目を加えて、過去のデータを電子化し「無欠点小試験体の強度データベース」を構築しました。
一方、「製材品の強度データベース」は、全国の公設試験研究機関の協力を得ながら1997 年より開発に着手してきています。着手から暫くして、人工乾燥やインサイジング*(保存薬剤を注入するための木材の表面加工)処理などの加工条件が強度低下に影響する場合があることが次第に明らかになり、それらの加工条件もデータベースに追加することになりました。
集成材の強度性能を評価するには、構成材料となる板(ラミナ)の強度特性とラミナのたて継ぎ方法(フィンガージョイント*)が影響を及ぼします。フィンガージョイントの加工条件としては、フィンガーの形状や接着剤の種類が重要となります。こうした項目を追加して構築したのが「ラミナの強度データベース」です。
構築した3つの強度データベースには、共有可能なデータ項目があるため、これらを関連付けして統合し、相互利用できるようしたものが「木材の強度データベース」です(図参照)。

成果の利・活用

開発したデータベースを用いて得られた解析結果は、ホームページで随時公開するとともに、データ集として取りまとめています。樹種による違いや、柱や梁の断面寸法が強度に及ぼす影響の解明はその一例です。また、このデータベースは日本農林規格(JAS)改正の際に強度等級区分に関する技術資料として活用されました。さらに、海外では、中国の「木構造設計規範」の改訂にも活用され、国産材の輸出という新たな木材需要拡大に貢献しています。

本研究は「予算区分:一般研究費、課題名:木質構造の構造安全性と快適性向上のための構造要素および評価技術の開発」(課題番号:C221)による成果です。

*インサイジング処理
保存薬剤が木材に入りやすいように、刃物等で木材の表面を処理すること。
*フィンガージョイント
板材を長さ方向に連続してつなぐ加工方法のこと。
図表1 236748-1.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p22-23.pdf
カテゴリ 加工 乾燥 需要拡大 データベース 評価法 薬剤 輸出

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