地域に眠る木質エネルギーの熱利用で脱温暖化と地域活性化

タイトル 地域に眠る木質エネルギーの熱利用で脱温暖化と地域活性化
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 垂水 亜紀
北原 文章
田内 裕之
吉田 貴紘
鈴木 保志
発行年度 2014
要約 山村で地域住民が手軽に活用できるエネルギーシステムとして、薪ボイラーを流域の温浴施設へ普及させた場合のCO2排出量やコスト、雇用賃金等を試算し、CO2削減効果、地域経済への効果があることを示しました。
背景・ねらい 日本の山村には豊富な森林資源があり、住民にとって薪は最も身近で、加工が容易なエネルギー源です。そこで、高知県内で実際に薪ボイラーを導入した温浴施設において、従来の灯油ボイラーと比較し、どの程度CO2 削減効果があるのか試算を行うため、木材の伐採から薪の加工、ボイラー投入までの過程についてデータ収集を行いました。また、流域のボイラー利用施設すべてに導入された場合の効果を試算しました。その結果、年間約1,400 トンのCO2 削減が可能となることがわかりました。山村において、エネルギーの地産地消システムを構築する上で、重要な選択肢の一つとなることがわかりました。
成果の内容・特徴

成果

温浴施設や園芸等で熱利用する小規模な木質バイオマスボイラーには、近年、薪ボイラーも増えてきました。その理由として、薪は加工するための手間がかからないことや、近年のボイラー性能の向上、さらにボイラーの価格が比較的安価であることなどが挙げられます。本研究では、薪ボイラーを地域の温浴施設に導入した場合、灯油ボイラーを利用するのと比較して、どの程度CO2 削減効果があるのか試算を行い、山村におけるエネルギーの地産地消システムについて検証しました( 図1)。

CO2 削減効果

薪ボイラー利用によるCO2 削減効果は、従来の灯油ボイラー使用時のCO2 排出量から、薪の加工・利用時の燃料や電力消費由来のCO2 排出量を差し引くことで求められます。算出条件として、出力70kw の薪ボイラー3 基を稼働させた場合、年間に必要な原木量はスギで2,186m3、そのうち薪の製造量・使用量を210 トン(湿潤重量)としました。その結果、この温浴施設では灯油使用時に比べて、年間136.5 トンのCO2 が削減可能との結果が得られました(表1)。
なお、これ以外の高知県仁淀川流域内でボイラーを設置している温浴施設等が同等の出力の薪ボイラーに置き換えると、28 基分となります。そこで、先ほど試算した薪ボイラー利用によるCO2 削減量をボイラー1 基分に換算すると45.5 トン-CO2 となることから、仁淀川流域内の温浴施設全てに薪ボイラー(計31 基)が導入されると仮定すると、そのCO2 削減効果は約1,400 トン-CO2となります。これは、一般家庭約300 世帯の年間CO2 排出量に匹敵します。

雇用等所得に及ぼす影響

同条件において、同作業に関わる労働力と各労働分の賃金試算を計算しました(表2)。これらの労働力に対して支払われる賃金は、単なるコストと捉えられがちですが、すべて地域内での雇用を産み出し、それは地域の人々の所得となり、その所得が消費されることによって、さらなる経済的な波及効果を生みます。
また、エネルギーの支出に関しても、1 施設で海外からの化石資源を年間約500 万円近く支払って購入していたものが、薪ボイラーにすることで燃料費が約120 万円(薪代)となり、それは域内の地域所得の増加に繋がります。

薪や小水力発電 * の活用など、山村ではエネルギーの地産地消に関して以前よりも身近な選択肢が広がっています。この事例と同規模のシステムを小水力発電とセットにして運用した場合の効果試算図を提示します(図2)。これらはあくまでも一つの例にすぎません。それぞれの地域にとって最適な解は、住民や行政、研究機関等関係団体が協力して、見つけていくことが重要です。

本研究は、独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センターの「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発プロジェクトによる「B スタイル:地域資源で循環型生活をする定住社会づくり」の成果です。

*小水力発電
発電規模が1,000 ~ 10,000kw の水力発電。100 ~1,000kw のミニ水力発電、100kw 以下のマイクロ水力発電を含む場合もある。
図表1 236750-1.jpg
図表2 236750-2.jpg
図表3 236750-3.jpg
図表4 236750-4.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p26-27.pdf
カテゴリ 加工 コスト

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