農業的な林業にチャレンジ -バイオマス資源作物としてのヤナギの短伐期栽培-

タイトル 農業的な林業にチャレンジ -バイオマス資源作物としてのヤナギの短伐期栽培-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 上村 章
伊藤 江利子
原山 尚徳
韓 慶民
宇都木 玄
発行年度 2014
要約 地理情報システムを利用して、エネルギー資源作物としてのヤナギ栽培適地を判定しました。また、広域に植栽するためには農業用マルチを用いた防草が有効であることがわかりました。これらから資源作物としてのヤナギの生産コストの試算を行いました。
背景・ねらい 地理情報システムを用いて、エネルギー資源作物として北海道のヤナギの栽培可能地域を推定したところ、砂礫地の耕作放棄地が有望と判断されました。コストに合う収量を得るためには、ヤナギの生育を妨げる牧草の防除が一番の問題であったため、大型の機械を用いて土壌を改良し、農業用マルチを敷設して防草しました。それらの費用を含め、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度) * を利用した販売価格を考えると、1トン当たりの生産コストを11,500 円以下にし、ha 当たり年間10 トンの生産力を得ることが必要であることがわかりました。

*再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)
Feed-in Tariff(FIT)とは、再生可能エネルギーの買い取り価格を法律で定める方式の助成制度。
成果の内容・特徴

はじめに

大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴いカーボンニュートラル * な再生可能エネルギーの利用が求められています。我々は挿し穂で植えられ、成長が早く萌芽更新 * 可能なエゾノキヌヤナギとオノエヤナギに着目し、エネルギー作物としての大規模栽培方法の研究を進めています。

広域的なヤナギ栽培可能地域とは?

ヤナギの栽培可能な土地は、ヤナギが育つこと(生育条件)とヤナギを植えられること(土地利用)の2 点を満たす必要があります。地理情報システム(GIS)を用いて、北海道(下川町)におけるヤナギの分布地域や繁茂状態を分析し、ヤナギ栽培に適した土壌条件を明らかにしました(図1)。これらの生育条件と併せて、耕作放棄地(採草放棄地)のように土地利用条件を満たす立地がヤナギの栽培適地となることがわかりました。

樹木の農業的生産

耕作放棄地は牧草の繁茂が著しく、ヤナギは牧草の陰になり枯れてしまいます。そこで、大面積の防草に有効なマルチシート * を敷設しました(写真1)。一方、砂礫地には礫が多く、マルチ敷設の前処理として大型の岩礫破砕機械(ストーンクラッシャー)を導入する必要がありました。こうした農業的土壌改良によって、より確実なヤナギの収量増大が期待できるようになりました。

コスト

ヤナギを3年周期で21年間収穫した時の栽培にかかるコストの割合を図2に示しました。ヤナギの収量(乾燥重量)は、系統 * によって大きく異なり、年間ha 当たり6 ~ 10 トンの間でした。そこで、年間の生産量を(A):6 トンと(B):10 トンの2 つのパターンについて、乾量1トンの生産にかかる栽培コストを試算しました。その結果、機械による土壌改良とマルチ敷設や更にシカによる食害対策まで含めた費用は、(A) で19,456 円、(B)で11,405 円と試算されました。また、農業で行われている土壌改良時におけるストーンクラッシャー費用を補助した場合は、(A) で12,852 円、(B) で7,534 円となりました。
FIT を利用した場合、木質バイオマス発電の原料となる木質チップの買取価格は、乾量1 トン当たり2 万円程度です。ヤナギを収穫した後、チップ化し工場まで運搬するのに乾量1 トン当たり約7,000 円程度かかります。そのため、経済的にヤナギの栽培が成立するには、栽培コストを1 トン当たり13,000 円以下に抑えることが必要です。土壌改良に補助金を投入した場合には、私達が確立した栽培方法で十分成り立ちますが、補助が無い場合には、下限のha 当たり6 トンの生産量を10 トンまで増加させる必要があります。今後も、さらなるコスト削減や収量の増加を目指して栽培手法の改良を行っていきます。

本研究は、下川町との栽培協定のもとに行われた森林総合研究所一般研究費「北海道における木質バイオマス資源作物生産促進技術開発」による成果です。
本研究の詳しい内容は、北海道支所ホームページ http://www.ffpri.affrc.go.jp/hkd/research/seikapanf.html をご覧ください。

*カーボンニュートラル
植物の燃焼によって放出される二酸化炭素は、植物が成長の際、大気中の二酸化炭素を吸収して得た物で、二酸化炭素の増加を引き起こさない。
*萌芽更新
枝や幹の切り口から再び枝を伸ばし成長すること。
*マルチシート
農業で用いられる雑草防除や地温管理のために敷設するビニールシート。黒や白黒や透明の色がある。
*系統
同じ親から無交配で増やされるクローンの品種の一つ。
図表1 236751-1.jpg
図表2 236751-2.jpg
図表3 236751-3.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p28-29.pdf
カテゴリ 病害虫 乾燥 コスト 再生可能エネルギー 雑草 シカ 土壌改良 品種 防除

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