タイトル | リグニン製品の商用化に向けた低コストのリグニン改質技術 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
山田 竜彦 髙橋 史帆 |
発行年度 | 2014 |
要約 | 木材の約3割を占める未利用成分であるリグニンから炭素繊維等の高付加価値製品の原料を製造するために、画期的な低コストのリグニン改質方法を開発しました。 |
背景・ねらい | 私たちは、燃料以外に有効利用されていない木材成分である「リグニン」から高い付加価値を持つ製品を製造する技術開発を行っています。ポリエチレングリコール(PEG)という化合物をリグニンに結合させることによってリグニンを改質し、「炭素繊維」や「コンクリート用混和剤」の原料として利用できるのですが、そのためには、エポキシPEG という高価な化合物を使う必要がありました。今回、私たちは安価なPEG そのものをリグニンに直接結合させる新しい手法の開発に成功しました。これにより、リグニンの改質にかかる薬品のコストを半減させることができ、商用化が近づいてきました。 |
成果の内容・特徴 | リグニンの有効利用木質バイオマスの主成分であるセルロースやヘミセルロースと呼ばれる糖類は、紙やバイオエタノール等に利用できます。一方、糖以外のもう一つの主成分である「リグニン」は、燃やしてエネルギー利用する以外の用途はほとんどありませんでした(図1)。私たちは、リグニンから機能材料を製造して新しい産業を創出することを目的に、リグニンを原料とする炭素繊維やコンクリート混和剤等を製造する技術を開発してきました。これらの技術には、PEG をリグニンに結合させることによってリグニンの性質を変え、リグニンを加工しやすい原料にする必要があります。私たちは、これまで「エポキシPEG」という化合物を用いてリグニンにPEG を反応させる手法を開発していました(図2)。しかしながら、エポキシPEG は高価な薬剤であり、製品の商用化のためにも製造コストの低減が必要でした。新たなリグニン改質法「アルカリPEG 処理」今回、エポキシPEG を利用しない新たな手法の開発に成功しました(図3)。この新手法は、アルカリを用いた紙パルプ製造工程で出てくる廃液に直接使えることを特徴としています。このパルプ製造工程からの廃液は黒液と呼ばれ、リグニンが溶解したアルカリ水溶液です。これを乾燥させて粉末状(黒液粉末)にします。黒液粉末中には、リグニンの他にアルカリ成分として水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムが多く含まれます。この黒液粉末が、そのままPEG に完全に溶解し、さらにこれを加熱することでPEG がリグニンと反応することがわかりました。これまでは、PEG のリグニンへの直接導入は難しいと考えられており、そのために高価なエポキシPEG を使っていましたが、リグニンとアルカリを含む黒液粉末を原料として用いることで簡単にPEG が導入できることがわかったのです。現在、この画期的な手法を「アルカリPEG 処理」と呼んでいます。PEG と反応したリグニンを精製してその性質を調べたところ、熱によって柔らかくなることがわかりました。これは、アルカリPEG 処理したリグニンが炭素繊維等の原料としてそのまま利用できることを示しています。新手法でコスト半減PEG は洗剤や化粧品等に用いられる化学薬品であり、比較的安価な化合物です。一方、エポキシPEG の価格はPEG の数倍以上もする高価な化合物です。アルカリPEG処理という手法を見出し、直接PEG をリグニンに作用させることができるようになったことで、リグニン改質に用いる薬品のコストは少なくとも半減しました。現在、この技術を用いて商用化に向けた研究を進めています。本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「地域資源を活用した再生可能エネルギーの生産・利用のためのプロジェクト-木質リグニンからの材料製造技術の開発-」の成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p30-31.pdf |
カテゴリ | 加工 乾燥 高付加価値 コスト 再生可能エネルギー 低コスト 薬剤 |