長期観測データが明らかにする森林の動き ~森林の構造や炭素蓄積の変化を見る~

タイトル 長期観測データが明らかにする森林の動き ~森林の構造や炭素蓄積の変化を見る~
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 佐藤 保
田中 浩
梶本 卓也
宇都木 玄
平井 敬三
新山 馨
松浦 陽次郎
藤間 剛
田淵 隆一
八木橋 勉
齋藤 智之
野口 享太郎
森下 智陽
Olga A. Zyryanova
Anatoly S. Prokushkin
Dokrak Marod
Decha Doungnamol
Abd. Rahman Kassim
Chandra Dewana Boer
Sutedjo
Warsudi
Pipat Patanaponpaiboon
Sasitorn Poungparn
発行年度 2014
要約 シベリアから熱帯域に至る代表的な森林において森林動態と炭素蓄積に関する長期モニタリングを進め、攪乱後の熱帯雨林の回復過程など短期間の調査ではわかり得ない変化を明らかにしました。
背景・ねらい 森林総合研究所では、シベリアから熱帯域に至る海外の代表的な森林のモニタリング試験地のネットワークを組織し、海外の研究機関・大学と連携して過去10年以上にわたって森林動態と炭素蓄積に関する長期継続観測を進めています。撹乱と炭素動態の関係を解析した結果、たとえば、択伐と火災撹乱を受けた熱帯降雨林では、択伐後15年以上経過しても炭素蓄積量の回復には至っていないことがわかりました。ネットワーク内の試験地で樹木の生残や成長を長期にモニタリングして相互比較することによって、森林構造や炭素動態について短期間の調査ではわかり得ない変化を把握しました。
成果の内容・特徴

なぜ長期モニタリングか?

地球温暖化による生態系への影響が懸念される中、森林の持つ二酸化炭素を吸収・固定する機能に関心が高まっています。森林の炭素蓄積量を知るには、種組成や成長量などを把握する必要がありますが、稀に発生する強風や火災などの撹乱が与える影響を無視することはできません。したがって、森林の状態ならびに炭素蓄積量を、その変化まで含めて正確に把握するためには、より長期にわたる観測(モニタリング)が必要となってきます。

東アジア森林動態試験地ネットワーク

このような考えから森林総合研究所では、海外の研究機関・大学と共同で、森林構造や炭素蓄積量の変化の仕組みを解明することを目的とした長期モニタリング試験地を設定してきました。現在、北方針葉樹林のトゥラ(ロシア)、熱帯季節林のメクロン(タイ)、熱帯降雨林のセマンコック、パソ(ともにマレーシア)、ブキットスハルト(インドネシア)と、熱帯湿地林のラノン、ラムセバイ(ともにタイ)の4カ国7ヶ所(図1)で観測ネットワークを形成し、海外の研究機関・大学と連携してモニタリングとデータの解析を行っています。

見えないものを可視化するモニタリング観測

図2上段に示した試験地群では、モニタリングデータから求めた過去20年ほどの地上部現存量* に大きな変化は認められませんでした。このような年々変動が少ない試験地でも、地上部現存量の水平面的なバラつきは存在しています。林冠層を構成する樹木が枯れることによって、林冠の一部が疎開した「林冠ギャップ」* が形成されます。たとえば、マレーシアのセマンコック試験地では、大径木(胸高直径70cm 以上)が枯れたギャップ下の地上部現存量は閉鎖林冠の3分の1程度まで低下していました(図3)。大面積の試験地を長期にわたって観測することで、このようなギャップや地上部現存量の水平面の細かな変化傾向を把握することが可能となります。一方、択伐実施後に火災撹乱を受けたインドネシアのブキットスハルト試験地では、択伐後15 年以上経過しても地上部現存量の回復に至っておらず、現存量は以前の半分以下でした(図2下段)。また、この期間の種組成を見てみると、2012 年の全体の種数は新たな種が加わったことによって1997 年に比べて増えていますが、1997年時点で存在していた種の約6 割しか残っておらず、種組成が大きく変化していました(図4)。強度の択伐と火災撹乱の影響を受けると種組成の面からも、20-30 年程度の短期間では火災による撹乱前の状態に回復するのは難しいことが予想されました。
このように長期モニタリングデータによって、ある一時点の調査のみでは把握できない森林構造や炭素動態の変化をとらえることが可能になります。加えてモニタリングデータの蓄積は、今後の環境変動から森林がどのような影響を受けるのかを予測するための貴重な情報となります。本研究のモニタリングデータの一部は、国内外の研究者・技術者とのデータ共有化を促進するためにプロジェクトホームページ(http://www.ffpri.affrc.go.jp/ labs/EA-FDPN/)にて公開しています。

本研究は環境省地球環境保全試験研究費「温暖化適応策導出のための長期森林動態データを活用した東アジア森林生態系炭素収支観測ネットワークの構築」による成果です。

*地上部現存量
樹木の葉、幹、枝の乾燥重量の総量。地上部現存量の半分が炭素蓄積量と見なすことができる。
*林冠ギャップ
樹木が枯死あるいは倒伏したことによって、林冠層に生じた隙間のこと。ギャップの発生は、地表面の光環境が好転して、樹木の世代交代を促進する役割がある。
図表1 236753-1.jpg
図表2 236753-2.jpg
図表3 236753-3.jpg
図表4 236753-4.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p32-33.pdf
カテゴリ 乾燥 データ共有 ばら モニタリング

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