タイトル | ミミズの放射性セシウム濃度は落葉層より低い |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
長谷川 元洋 |
発行年度 | 2014 |
要約 | 森林生態系で落葉を食べて生活しているミミズの放射性セシウム濃度の変化を毎年測定したところ、その濃度は年々減少し、餌である落葉からの濃縮はみられないことがわかりました。 |
背景・ねらい | 福島原発事故によって放出された放射性セシウムは、森林の落葉層及び土壌に集積していることから、落葉や土壌に生息する生物の放射能汚染や濃縮が懸念されます。そこで、福島県のスギ林で、土壌生物の代表としてミミズに着目し、その放射性セシウム濃度の変化を測定しました。ミミズの放射性セシウム濃度は、生息地の落葉層と土壌の中間の濃度を示しました。さらに、ミミズの放射性セシウム濃度は年々低下し、体内での濃縮は起きていないことがわかりました。 |
成果の内容・特徴 | 落葉の汚染とミミズの放射性セシウム福島第一原発の事故後に行った森林総研の調査から、森林の放射性セシウムは、落葉層及び土壌に蓄積しつつあることが明らかになりました。放射線は生物の体外と体内の双方から影響を与えるため、落葉層や土壌に生息するミミズなどの土壌生物に強い影響を及ぼす可能性が考えられます。ミミズ(写真1)は落葉を分解し土壌を作るとともに、他の動物の餌にもなります。ミミズにも多くの種類がありますが、その中でも落葉を主に食べる地表付近に棲む表層性ミミズへの、放射性物質の影響は大きいと予想されます。ミミズの放射性セシウム濃度は落葉より低い2011 年の原発事故の半年後に、福島県川内村、大玉村、只見町のスギ林でミミズを採取し、放射性セシウム濃度を測定しました。その時のスギ林の空間線量率は、それぞれ毎時3、0.3、0.1 マイクロシーベルトで、地域によって大きく異なります。3 カ所のミミズの放射性セシウム濃度は、それぞれ採集したスギ林の落葉層と土壌層(0~ 5 cm)の濃度の中間の値を示しました(図1)。このことから、ミミズの放射能汚染は森林の汚染状況に比例していること、また、体内の放射性セシウム濃度は餌としている落葉の濃度より低いことがわかりました。ミミズの放射性セシウム濃度は年々減少ミミズの放射性セシウム濃度を、さらに1年半後、2年半後と継続して調査したところ、その濃度は年々低下していました。放射性セシウムは物理的崩壊(Cs-134 の半減期は約2 年、Cs-137 の半減期は約30 年)により自然に濃度が低下しますが、ミミズの放射性セシウム濃度の低下はそれよりも速いことがわかりました(図2)。また、いずれの年の計測においても、ミミズの放射性セシウム濃度は落葉層と土壌層(0 ~ 5 cm)の中間の値を示し、餌である落葉とミミズの間で放射性セシウムの濃縮は起きていないことが確認できました。放射性セシウムは森林生態系を循環するといわれています。ミミズ体内の放射性セシウムは捕食する動物(ネズミ、モグラ等)に移行すると考えられます。このことから、森林生態系の樹木、落葉、土壌、そこに生息するミミズや動物の放射性セシウム濃度を長期にわたりモニタリングし、その動態を明らかにする必要があります。 本研究は、林野庁「森林内における放射性物質実態把握調査事業」による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p40-41.pdf |
カテゴリ | モニタリング |