津波による海岸クロマツの立ち枯れ被害に地形が影響

タイトル 津波による海岸クロマツの立ち枯れ被害に地形が影響
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 中村 克典
木村 公樹
発行年度 2014
要約 東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波により、青森県太平洋沿岸の海岸林では広い範囲でクロマツが立ち枯れました。この被害は、侵入した海水が停滞しやすい地形条件の場所で多く起きたことが明らかになりました。
背景・ねらい 東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波により、青森県太平洋沿岸の海岸林が広範囲に浸水しました。浸水した海岸林のクロマツの多くは、当初は緑の葉を付けて枯れることもなく立っており、津波による被害は他の被災県に比べて格段に少ないと考えられていました。しかし、その年の夏頃から、急にクロマツの葉が赤変し、多くの木が立ち枯れてしまいました。被害の実態とその理由を明らかにするため、現地での樹木被害調査に加え、地形測量とモーターパラグライダーによる上空からの写真撮影を行った結果、被害は凹地形や平坦地形の滞水しやすい場所で集中的に発生したことが明らかになりました。
成果の内容・特徴

被害の概要

2011 年3 月11 日、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0 の地震に伴う巨大津波により、青森県の太平洋沿岸部の海岸林には、前線部を中心に幹折れや根返り、流失が生じましたが、福島、宮城、岩手などの被災県に比べると被害は限定的なものであると認識されていました。しかし、その年の夏頃から、被災直後には被害を免れたと思われていたクロマツ海岸林において、広範囲にわたって急激に針葉が赤枯れ状態となり、その後、多くの木が立ち枯れてしまいました(写真1、2)。
津波後に時間をおいて発生したクロマツの立ち枯れ被害の状況やその原因を明らかにすることは、これまでよりも津波に強い海岸林を再生していくための重要なヒントが得られると考えられます。

調査の方法

立ち枯れの発生状況を把握するため、海岸林に帯状の調査区を設け、被害を一本一本調査するとともに、調査区の周辺を含めて地形測量を行いました( 図1)。しかし、地上での調査だけでは調査範囲が限られるため、モーターパラグライダーを用いて上空からも調査することにしました。これらの立ち枯れ被害状況の調査と地形測量の結果を組み合わせて画像処理を行い、海水の停滞に関係する微地形と被害の状況を三次元表示して解析しました(図2)。

枯死被害には地形が影響

青森県太平洋沿岸の海岸林のクロマツにおける津波後の立ち枯れは、林内の微地形に大きく影響され、低地の平坦地や凹地形で被害が大きく、凸地形や傾斜地形では被害が少なかったことが明らかになりました(図1)。地形測量結果を元に浸水域を三次元表示することにより、周囲よりも低く、海水の滞水しやすい場所に被害が集中している様子を視覚的にわかりやすく捉えることができました(図2)。
海岸林に植栽されるクロマツは塩害に強く、津波が通過しただけでは枯れないことが知られています。しかし、低地や窪地など林内に侵入した海水が長時間溜まるような場所では、塩害に強いとされるクロマツでも大きなダメージを受けて枯れたと考えられます。このことから、津波後、速やかに排水される地形をつくることはクロマツの枯死被害を軽減させるのに効果的で、排水を促す水路や盛り土は被害軽減に有効であると期待できます。
青森県では今回の成果を海岸林再生計画に反映させることを検討しています。また、海水の溜まりやすい場所を視覚的に表示する今回の解析方法は、青森県に限らず、水路や盛り土などを配置することで排水を考慮した海岸林の再生・造成計画にあたって強力な支援ツールとなるでしょう。

本研究は森林総合研究所交付金プロジェクト「東日本大震災で被災した海岸林の復興技術の高度化」の成果の一部です。
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図表2 236759-2.jpg
図表3 236759-3.jpg
図表4 236759-4.jpg
図表5 236759-5.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p44-45.pdf
カテゴリ 画像処理 傾斜地

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