シカの行動を制御して効率よく捕獲する

タイトル シカの行動を制御して効率よく捕獲する
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 八代田 千鶴
小泉 透
発行年度 2014
要約 シカの被害地において給餌による条件付けによりシカの行動を制御する誘引法を開発し、銃器の使用が可能な日中に給餌場へシカを誘引することで効率よく捕獲する方法を確立しました。
背景・ねらい 全国的にシカが増え、森林・林業被害が深刻になっています。被害軽減には捕獲による個体数管理が有効ですが、狩猟者の減少に対応する必要があります。そこで、少人数で効率よくシカを捕獲するための誘引法を開発しました。この方法は、一定期間同じ条件で給餌作業を繰り返すことで条件付けを行い、銃器の使用が可能な日中に給餌場へシカを出没させる方法です。この誘引法と銃器による狙撃を組み合わせた誘引狙撃法を富士山国有林におけるシカ捕獲事業で実施し、高い捕獲効率を達成しました。同じ場所で短期間に繰り返し捕獲が可能であり、地域を限定してシカの個体数管理を実施する場合に適しています。
成果の内容・特徴

新しい捕獲技術の必要性

全国的にシカが増え、森林・林業被害が各地で深刻な問題になっています。これまでは忌避剤の散布や防護柵の設置といった対策が実施されてきました。しかし、林業では生産現場とシカの生息地が重なっているので、被害を軽減するためには捕獲による個体数管理が有効ですが、これまで主に銃器を用いて捕獲を担ってきた狩猟者は減少し続けています。そのため、ワナを用いた新しい捕獲方法も開発されていますが、森林内では機動性が高いなど銃器の利用が適している場合も数多くあります。そこで、少人数の射手で実施できる新しい捕獲技術を開発しました。

誘引法の開発

銃器の使用が可能な日中(日出から日没まで)にシカを誘引するために、一時的に設置した給餌場に同じ人が同じ時間に少量の餌を置く作業を一定期間繰り返し、条件付けによる学習効果を利用したシカの行動制御を試みました。その結果、給餌直後にシカの出没を誘導することができました(写真1)。また、給餌期間中だけシカが出没することも確認しています(図1)。この誘引法を用いて給餌場に誘引したシカを、銃器により確実に狙撃する誘引狙撃法では、少人数の射手で効率よく捕獲することが可能です。静岡森林管理署が平成23 年度から3 年間実施した富士山国有林でのシカ捕獲事業では、1 日あたりの捕獲頭数は各年度で12.2 頭、16.6 頭、11.8 頭と、射手2 名で非常に高い捕獲効率(これまでの方法の約40倍)を達成しました。また、この事業の成果から、誘引狙撃法は特定の範囲内での繰り返し捕獲に適しているといえます。

誘引に影響する要因

誘引狙撃法では、シカを自発的に給餌場へ引き寄せる誘引が重要となります。誘引効果は、シカの餌となる植物の量が少ない場合に高くなります(図2)。そのため、積雪により餌植物を利用できない時期は強い誘引を持続させることができます。こうした条件を考慮して、給餌場の位置や実施時期を決めることが重要です。また、シカは警戒心が強いため、イノシシのような他の野生動物が給餌場に頻繁に出てくると誘引効果は低下します(写真2)。このような場所では、シカ以外の動物を誘引しない餌を選ぶ必要があります。人の気配もシカの警戒心を高めてしまうので、給餌期間中は不必要に立ち入らないなどの配慮も必要となります。

本研究は、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「林業被害軽減のためのニホンジカ個体数管理技術の開発」による成果です。
図表1 236761-1.jpg
図表2 236761-2.jpg
図表3 236761-3.jpg
図表4 236761-4.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p48-49.pdf
カテゴリ 管理技術 シカ 防護柵

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