森林の生物多様性を予測する

タイトル 森林の生物多様性を予測する
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 岡部 貴美子
服部 力
佐野 真
宮本 麻子
尾崎 研一
柴田 銃江
佐藤 重穂
中静 透
発行年度 2014
要約 森林の管理手法の影響により里山地域の森林生物の多様性がどのように変化するかを長期的に予測するシミュレータを作成しました。
背景・ねらい 国内外の社会経済情勢によって森林管理手法は変化しますが、森林率の高い日本の生物多様性は、この様な影響を強く受けると考えられます。この研究では、持続可能な森林管理のための生物多様性評価の標準的な指標である森林タイプ、林齢、面積により森林の生物多様性が6つのクラスに分けられることを明らかにし、これらのクラスの位置や割合が森林管理手法によってどのように変化するかを予測するシミュレーションモデルを作成しました。
成果の内容・特徴

はじめに

日本は国土の約67% という高い森林率を維持していますが、かつての急激な人工林化と原生林の減少、近年の不十分な森林管理などによって、特に里山地域の生物多様性は大きな影響を受けています。しかし森林の遷移には時間がかかるため、改善の効果をすぐに評価するのも困難です。そこで私たちは100 年後の里山の森林生物の多様性を予測するシミュレータを作成し、森林の管理方法の変化による影響を可視化する研究に取り組みました。

森林の生物多様性の示し方

生物多様性は、生物種が豊富なこと(種の多様性)、各個体が遺伝的に異なること(遺伝的多様性)、まとまりのある複数種の生息地(生態系)が多いこと(生態系の多様性)という3つの異なる視点から示すことができます。シミュレータでは一般的で、直感的にわかりやすい「種の多様性」を使って、生物多様性を示すことにしました。

森林タイプ、林齢、面積による種のグループ化

種の多様性はこれまでの研究によって、森林タイプ(人工林・天然林=植栽していない森林)、林齢、面積によって異なることが知られており、持続可能な森林管理を目標とする国際的グループの多くは、これらを指標として利用しています。そこで日本の様々な森林で出現する生物を比べてみると、図1に示すように林齢と森林タイプから3つのグループ(群集)に分かれることがわかりました。また人工林は天然林よりも種数が減少すること、天然林の面積が大きくなると生物種数が増えることもわかりました。これらの結果からシミュレータでは、種の多様性(群集と種数の大小)を森林の指標に対応させ、100ha 以上の老齢天然林、100ha 未満の老齢天然林、壮齢天然林、広葉樹林化した人工林、若齢林、壮齢・老齢人工林の6つのクラスに色分けして示しました。

生物多様性を予測する

北海道下川町、茨城県北部、高知県四万十川流域で、空中写真やGIS 情報等に基づき、現在の種の多様性を地図に示しました(図2)。種の多様性が森林の管理手法によってどのように変化するか、100 年後を予想しました。たとえば、人工林はすべて二次林にし、二次林の一部は伐採、残りはそのまま維持すると、図3のように老齢天然林に生息する種の多い森林になると予想されます。逆に全部人工林にしてしまうと、若齢林に生息する種の多い森林へと変化することが予測されます(図4)。このように生物多様性シミュレータでは、森林管理がどのように生物多様性に配慮したらよいか、についてさまざまな提案をすることができます。

本研究は、環境省地球環境保全等試験研究費(公害一括)プロジェクト「生態系保全政策のための森林の生物多様性変動シミュレータの構築」による成果です。
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研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p50-51.pdf
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