スギのゲノム情報を用いて優良な苗を作る

タイトル スギのゲノム情報を用いて優良な苗を作る
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 内山 憲太郎
森口 喜成
木村 恵
上野 真義
伊原 徳子
松本 麻子
二村 典宏
篠原 健司
津村 義彦
三嶋 賢太郎
坪村 美代子
井城 泰一
高橋 誠
渡辺 敦史
舘田 英典
岩田 佳洋
発行年度 2014
要約 スギの育種促進のために遺伝子情報、遺伝子地図、形質データなどのゲノム情報の基盤整備を行いました。これらの情報を用いてスギの優良な苗木を若木のうちから効率的に選抜できるモデルを構築しました。
背景・ねらい 林木の育種は形質の評価までに数十年の時間が必要です。またスギでは花粉症が社会問題となっています。これらの問題を改善するために、スギのゲノム全体の遺伝子型を調べ形質との関連を明らかにする手法を用いて、短期間で成長が早く材質のよいスギ品種の選抜が可能な育種モデルの作成を行いました。また、無花粉スギの遺伝子(雄性不稔遺伝子)の染色体上の位置を特定し、無花粉スギの選抜のためのDNA マーカーの開発を行いました。 これらの基盤情報により、育種に必要な時間が大幅な短縮され、無花粉で成長の良いスギ品種が開発・普及されることが期待されます。
成果の内容・特徴

スギのゲノム基盤情報の構築

スギのDNA 変異情報(SNP マーカー)を、スギのゲノムの11 万カ所について収集しました。これらのDNAマーカーからゲノム全体をカバーできるように、代表的な3,570 遺伝子からなるスギの遺伝子地図(高密度連鎖地図)を作成しました。また有用遺伝子をスギのゲノム中から効率的に単離するためのDNA ライブラリー(平均約13 万塩基からなるDNA 断片を集めたもの、BACライブラリー)を作成しました。

有用な遺伝子の特定

関東のスギ精英樹、約500 個体を用いて雄花着花性、発根性、材質の測定を行いました。これらの精英樹それぞれについて、6,000 のDNA マーカーで遺伝子型を解析し、取得した形質データとの関連解析(ゲノムワイドアソシエーション解析)を行い、これらの形質に関係する遺伝子の染色体上での位置の推定を行いました。この結果、雄花、発根性、材質に関連する数十の遺伝子が検出されました。これらの情報は優良な種苗の作成に有効に活用することができます。

無花粉スギ遺伝子の特定と選抜DNA マーカーの作成

これまでに発見されている無花粉スギはms-1 という遺伝子を保有する個体です。この遺伝子がスギの遺伝子地図の第9 番目の連鎖群(染色体)にあることを明らかにして、無花粉スギの選抜するためのDNA マーカーを作成しました。これを目印にすることで芽生えのうちから無花粉スギを選抜していくことができるようになりました。

効率的な林木育種のモデル

精英樹の形質データと遺伝子型データを用いて育種を効率的に行うモデルを開発しました。従来の形質だけを指標にした育種法に比べ、約2 倍の効率で効果が期待されるモデルができました。このモデルだけで世代を促進させるだけでなく、途中で形質を再評価してモデルを一度見直すことでさらに育種効率が良くなります。これらの成果は新たな林木の育種法として今後、急速に普及することが期待されます。

本研究は、生物系特定産業技術研究支援センター イノベーション創出基礎的研究推進事業「スギ優良個体の選抜のためのゲノムワイドアソシエーション研究」による成果です。
図表1 236768-1.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2014/documents/p62-63.pdf
カテゴリ 育種 DNAマーカー 品種

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