ゲノム重複による遺伝子の多コピー化を利用した微生物育種法

タイトル ゲノム重複による遺伝子の多コピー化を利用した微生物育種法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 稲岡隆史
発行年度 2013
要約 ゲノム重複はゲノムDNAが部分的に多コピー化する現象であり、薬剤耐性遺伝子等の適当な選択マーカー遺伝子の利用によりゲノム重複株が選抜できる。これを活用して微生物の有用遺伝子の発現を増大させる微生物育種が可能となる。
キーワード ゲノム重複、多コピー化、微生物育種、遺伝子発現、選択マーカー
背景・ねらい 発酵細菌等の有用機能をより効率的に向上させる微生物育種法の開発が望まれている。ゲノム重複は複製の過程でゲノムDNAが部分的に多コピー化される現象である。ゲノム重複が起こる頻度は低いが、コピー数の増加が有利な環境下では多コピー化が促進されることになるため、適当な選択マーカーを利用することによりゲノム重複の微生物育種への活用が期待できる(図1)。そこで、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)を選択マーカーとして導入した枯草菌(Bacillus subtilis)を用いて、ゲノム重複を介した微生物育種法の効果を検証する。
成果の内容・特徴
  1. B. subtilis TI74株は、B. subtilis 168株ゲノム上のamyE遺伝子領域にcat遺伝子及びβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)を含む約5.3kbの外来DNAを挿入して作製する(図2)。
  2. cat遺伝子を1コピー有するTI74株はクロラムフェニコール(Cm)5μg/mLに耐性であるが、高濃度(50-80μg/mL)のCmを含む寒天培地に適量の菌体をプレーティングすることにより高耐性株を取得できる。試験した全ての高耐性株においてcat遺伝子のコピー数が増加しており、cat遺伝子による選抜は極めて有効である(表1)。
  3. 選抜した全ての株において、lacZ遺伝子のコピー数はcat遺伝子のコピー数と一致しており(表には示さず)、β--ガラクトシダーゼ活性も増大する(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. Cm 60μg/mL以上で選択した場合、平均コピー数が一定になることから、Cm耐性能が最大になっていると考えられる(表1)。
  2. Cm 60μg/mLでは、lacZ遺伝子のコピー数が増加しているにも拘らずβ--ガラクトシダーゼ活性が増大しないことから、添加している高濃度のCmがタンパク質合成に影響している可能性が考えられる(表1)。
  3. cat遺伝子プロモーターを低発現プロモーターに置換することにより、さらにコピー数を増加させることも可能である。
  4. 他の薬剤耐性遺伝子やアミノ酸合成の遺伝子等でも利用可能であるが、ゲノム重複株の出現頻度は使用する薬剤や濃度によって異なるため、予め検討する必要がある。
  5. 目的微生物が元来有する薬剤耐性遺伝子を重複させたい目的領域にセルフクローニングして利用することも可能である。
  6. 数百kbの領域が重複することもあるが、重複領域の長さと出現頻度は逆相関関係にある。
  7. コピー数を一定に保つためには、常に選択薬剤を添加するか、高耐性株の取得後にRecAのような組換え関連タンパク質を欠損させる必要がある。
  8. 微生物だけでなく、作物育種等にも活用できる可能性がある。
  9. ゲノム重複を抑制することにより細菌の薬剤耐性菌の出現を抑制できる可能性がある。
図表1 236793-1.jpg
図表2 236793-2.jpg
図表3 236793-3.jpg
図表4 236793-4.jpg
図表5 236793-5.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2013/nfri13_s16.html
カテゴリ 育種 耐性菌 薬剤 薬剤耐性

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