タイトル | 小型水槽を使用したアカアマダイの種苗生産技術の開発 |
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担当機関 | 島根県水産技術センター |
研究期間 | 2006~2014 |
研究担当者 |
清川智之 堀 玲子 |
発行年度 | 2014 |
要約 | これまで成功事例がほとんどなかった、小型水槽(水槽容積:3m3または5m3)を使用したアカアマダイの種苗生産において、基本的な飼育方法の見直しと、油膜発生の抑制・除去および仔魚の水面への接触促進による開鰾率の向上により、ふ化から2ヶ月後の取り上げまでの生残率を平均20%まで高め、かつ形態異常率もほぼ0にまで低下させることができた。 |
背景・ねらい | アマダイは島根県の沿岸漁業における位置付けが高く、特に出雲市小伊津地区で水揚げされる「小伊津のアマダイ」はブランド魚として高い評価を受けているが、近年漁獲量・金額ともに減少傾向にある。そのため本県では、本種を栽培漁業対象種に選定、本種の種苗生産技術開発を開始した。 本種の種苗生産は当初、形態異常魚の出現がみられ、生残率も低かった。また使用する卵が天然魚由来のため大型水槽で生産できるほどの受精卵を一度に確保することが難しいなどの課題を抱えていた。このため最適な飼育条件を明らかにするためには同じ由来の受精卵を用いて、各種条件を変えた生産試験を行う必要があり、本県では小型水槽を用いて種苗生産技術開発を実施している。 |
成果の内容・特徴 | 2011年までの結果から、形態異常は仔魚前期に鰾に空気を取り込めるかどうかで決定すると考えられたので、2012年以降の種苗生産は、空気を取り込む際の阻害要因となる油膜が発生しにくいナンノクロロプシス(微細藻)で初期餌料のワムシを栄養強化、油膜除去装置の通気量増大、開鰾が終了するまで、飼育水のオーバーフロー排水(写真1)や仔魚が水面に接触しやすい間欠通気を行う等の条件を設定して行った。その結果、ふ化から取り上げまでの平均生残率及び形態異常率は、2011年がそれぞれ10.8%、75.6%であるのに対し、2012年は22.0%、2.2%と生残率が高くなり、形態異常率は大幅に低下した。2013年にも14.3%、0.6%と、前年と同様な結果が得られた(表1)。形態異常率が高かった2011年は、日齢30前後に開鰾したのに対し、飼育方法を改善した2012年以降は日齢10前後にほぼ全てが開鰾した。2013年は開鰾後のワムシの栄養強化剤を、2011年以前に使用していたものに変更するなどしたが、取り上げ時に形態異常魚はほとんど確認されなかった。このことからアカアマダイの形態異常は日齢10前後までに開鰾すれば防除が可能と考えられた。 |
成果の活用面・留意点 | 小型水槽での生産が可能となれば、少ない受精卵でも生産が可能となり、同一ロットの受精卵のみで生産できるので防疫面にも寄与する。さらに同じ由来の受精卵を、条件を変えて飼育することで、有効な生産方法の検証が可能となる。本技術はアマダイのみならず種苗生産技術全般の進展に寄与すると思われる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4741&YEAR=2014 |
カテゴリ | 病害虫 防除 |