帰属性解析を用いたアユの由来判別による早期種苗放流効果の評価

タイトル 帰属性解析を用いたアユの由来判別による早期種苗放流効果の評価
担当機関 岐阜県水産研究所
研究期間 2011~2011
研究担当者 武藤義範
発行年度 2014
要約  木曽川支流付知川において、海産系アユ種苗を湖産系アユ種苗よりも約2週間早く放流し、解禁当初の友釣りによる漁獲魚を採取した。採取したサンプルについて、マイクロサテライトDNAマーカーを用い、帰属性解析により起源集団の推定を行ったところ、早期に放流した海産系種苗が優先的に漁獲されることが明らかとなった。
背景・ねらい  木曽川水系付知川では海産系人工種苗の単独放流では解禁当初の友釣り釣果に不安を感じるため、海産系人工種苗と湖産系人工種苗の2種類の種苗を放流している。これらの放流効果について検証するため、解禁日直前に友釣りでアユを試験採捕し、漁獲魚の起源集団の推定を行った。
成果の内容・特徴  木曽川水系付知川(図1)において、海産系人工種苗を早期放流し、その2週間後に湖産系人工種苗の放流が行われた(表1)。放流された海産系人工種苗及び湖産系人工種苗を、アユ用に開発された6種のマイクロサテライトDNAマーカーを用いて帰属性解析を行ったところ、お互いに判別することが可能であった(図2)。そこで、このマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、解禁前に行った試験釣り(友釣り・水温13.6℃)で採取した漁獲魚の起源集団の推定を行ったところ、76.6%が海産系人工種苗と推定された(図3)。また、漁獲魚の平均体重は、海産系と判別された群が28.26g、湖産系と判別された群は26.24gであった。これにより、低水温期のナワバリ形成性に劣るといわれる海産系人工種苗であっても、早期放流によってサイズ的に湖産系人工種苗よりも優位になれば、解禁当初の水温が低い時期でも問題なく友釣りで漁獲されることが明らかとなった。
成果の活用面・留意点  冷水病対策を優先して考えるのであれば、冷水病耐性を有する海産系人工種苗のみの放流が有効であるが、実際には解禁当初の低水温期の漁獲の安定を狙って、山間地の低水温河川を中心に湖産系種苗が放流されているのが現状である。しかし、本研究成果は、海産系を早期に放流すれば、湖産系人工種苗の放流を取りやめても解禁当初の友釣りに大きな影響を与えない可能性を示している。また、サイズ的に優位な海産系を湖産系と同時に放流した場合、本研究と同様の結果が得られる可能性があるが、種苗の大型化は育成経費の増大による種苗単価の上昇を招くことから、早期放流の方がコスト的に有利であると考えられる。

 なお、海産系人工種苗の単独放流による解禁当初の好漁場の創出と冷水病被害の軽減を図るには、アユ種苗の放流効果が年によって水温、水況等の影響を受けて大きく変動することから、解禁後の友釣りによる漁獲状況、冷水病発生状況を含めて複数年調査を行い見極める必要がある。
図表1 236866-1.jpg
図表2 236866-2.jpg
図表3 236866-3.jpg
図表4 236866-4.jpg
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4770&YEAR=2014
カテゴリ コスト DNAマーカー

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