タイトル | 土壌の炭素貯留に最適なイネ残渣の燃焼・炭化程度を解明 |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
梶浦雅子 和穎朗太 林健太郎 |
発行年度 | 2014 |
要約 | イネ残渣を燃焼する際、燃焼温度が高いほど残存する炭化物の量は低下しますが、その微生物分解に対する安定性は増加します。このため、中程度の燃焼温度で生じる炭化物が最も長期的に残りやすいことを、室内実験を基にしたモデルから明らかにしました。 |
背景・ねらい | 人間の利用しない植物バイオマスを工業的に炭化させ、化学的に安定な形態にした炭素を土壌に戻すバイオチャー技術は、地球温暖化の緩和策として世界で注目されています。一方日本では、イネ残渣の野焼きや籾殻のくん炭が古くから行われ、病害虫予防や土壌改良に用いられてきました。しかし、野焼きやくん炭製造時の燃焼・炭化条件は様々であるため、そこから生じる炭化物の性質や、その土壌での長期的な挙動については不明な点が多いのが現状でした。そこで、燃焼・炭化条件によってイネ残渣の残存量、理化学性、および微生物分解性がどの程度変化するかを定量的に明らかにし、更に、モデルによってイネ残渣由来の炭素の、土壌に鋤き混まれた後の長期的な動態を評価する研究を行いました。 |
成果の内容・特徴 | 植物バイオマスが燃焼される時、燃焼温度に対する熱分解量と微生物分解性の間にはトレードオフの関係があるため、土壌中での炭素貯留量を最大化させる温度の最適領域が存在することが予想されます(図1)。 稲わらと籾殻を、通常および低酸素条件で、200 ℃から 600 ℃で段階的に燃焼させる室内実験を行ったところ、燃焼温度が高いほど熱分解による重量減少が増加し(図2a)、生成された炭化物の微生物分解性は低下すること(図2b)、またこの傾向は籾殻より稲わらでより顕著であることが分かりました。この分解性データを基に炭化物由来炭素の長期動態のモデル化を行なったところ、燃焼温度には炭素貯留量が最大となる領域(100 年スケールにおいて 300-400 ℃)があることが分かり(図2c)、またこの付近の燃焼温度では残存炭化物中のセルロース・ヘミセルロースが急激に減少し、同時に芳香族炭素が急増することが固体 13C 核磁気共鳴法から明らかになりました。 現場において植物バイオマスの燃焼によって土壌炭素の蓄積を効率的に高めるためには、今回明らかになった最適温度領域が、異なる燃焼条件(酸素・水分条件、昇温速度、植物タイプ)によってどの程度変化するかを明らかにし、また燃焼条件を制御し、大気を汚さない技術の開発が必要となります。 本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のための技術開発」および日本学術振興会・最先端・次世代研究開発支援プログラム「地球炭素循環のカギを握る土壌炭素安定化:ナノ~ミリメートル土壌団粒の実態解明(課題番号:GR091)」による成果です。 |
図表1 | |
図表2 | |
研究内容 | http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result31/result31_14.html |
カテゴリ | 害虫 炭素循環 土壌改良 |